ホンダビートやスズキカプチーノ、マツダAZ-1など、軽スポーツカーが続々と消えていったのが、90年代後半のこと。そんな「軽スポーツカー冬の時代」であった1999年、東京モーターショーにおいて突如として登場したのが、ダイハツのコンセプトカー「KOPEN」だ(市販型では「COPEN」になった)。
そこから2年半後の2002年6月、ほぼデザインを変えずに市販された初代コペン。現行コペンは2014年6月に登場した2代目だ。
排気量の大きなスポーツカーで速く走るのとは違い、限られた排気量とエンジンパワーの中でドライビングする、という独特の楽しみがあるコペン。コペンを見ていると、速く走ることだけがクルマの魅力ではないことに気づかされる。今回は、そんなコペンの魅力について、振り返ってみようと思う。
■日常の価値観から離れて楽しむ
「クルマの楽しさを感じてもらいたい」という思いでつくられた、コペン。単なる移動手段ではなく、思い通りに操り、クルマと一体になって走ることの楽しみを体感して欲しい、そうしたドライビングを求めるユーザーに届けたいというのが、ダイハツの願いだ。
2人乗りのオープンカーほど、非日常を味わえる乗り物はない。ちょっとした買い物ですら困るほど、荷物が乗らない。電動ルーフはトランクルームに格納されるため、オープン状態だと荷室スペースはさらにわずかになる。小旅行ですら困る程だ。
だが逆に、それが良い。「絶対的な速さ」とか「ヒトや荷物がたくさん乗る」といった当たり前のクルマの価値観とは離れた、楽しみ方ができる。例えば、荷室の上に荷物を乗せるキャリーを付けトランクを括り付ける、といった、まるで映画のワンシーンのような旅をする。日常の価値観を離れ優雅な気分に近づける、とっておきの一台だと思う。
■いつでも好きなデザインに変更可能!!
また、コペンは、デザインをカスタムできるのも魅力。コペンは、デザインの方向性を変えた4つのグレード(ローブ、エクスプレイ、セロ、GRスポーツ)に分かれているが、骨格を固定(D-Frame構造)して、外板を樹脂化したことで(一般的にはスチール製)、ボディ表面のパーツを交換することができるのだ。
しかも、購入後でも個人の好みに合わせたデザイン、カラーの変更ができる。3年乗ったら外装パーツを交換する、といったことが可能なのだ。ちなみに、交換可能な樹脂パーツは、フロントフード、ラゲージ、フロント/リヤバンパー、フロント/リヤフェンダー(左右2個)、ロッカー(左右2個)、フューエルリッドの11部品にもなる。
内装のカラーパッケージは3通り、レッドとベージュ、そしてブラックが選択できる。ボディの外装のパターンが豊富にあり、更には、内装の組み合わせも豊富で悩ましいところだが、好みのカラーデザインを選ぶ楽しみもある。ホワイトのボディ色にベージュ色の内装の組み合わせなど、シックでカッコよい。
ヘッドレスト一体型のスポーツシートは、サポート性が高いシートだが(座面と背面を温めるシートヒーターが標準装備)、ローブ S、エクスプレイ S、セロ Sには、レカロ製シートがグレード標準装備となる。
■「軽」と侮ることなかれ!!
狭いフロントセクションに収まるエンジンは、660ccの3気筒ターボエンジン(64ps/92Nm)だ。ミッションは5速MTか、7速スーパーアクティブシフト付きCVTの2種類となる。燃費はMT車が22.2km/L(WLTCモード燃費)、CVT車は25.2km/Lだ。
吸気バルブの開閉タイミングを最適化する「DVVT」を採用しており、低回転から力強いトルクが得られ、街中から高速まで、無駄なくパワーが引き出せるようにセッティングされている。決して速いクルマではないが、必要十分なパワーであり、普段使いにも適しているし、エンジンをブン回して遊ぶ、という楽しみ方もできる。もちろん、コペンの象徴である、約20秒でフルオープンとなる「電動開閉式ルーフ」も全グレード標準装備されている。
最も安いコペンは、ローブ/エクスプレイの188万8700円(2WD CVT)だ。セロは194万3700円、それぞれの上級グレードである「S」になると、20万円ほど上がるが、レカロシート(2脚)やその他の専用パーツが備わると考えれば、「安い」と感じられないだろうか。なお、GR SPORTは238万2200円となる。
■コペンに乗りたいなら、急げ!!
2015年に誕生したライバルのホンダS660は、2022年3月をもって生産を終了することが発表されている(既に予約販売終了とのこと)。
ルーフをオープンにして、颯爽とドライブしても良し、写真を撮ってSNSにシェアしても良し。コペンの楽しみ方は無限大だ。しかし、コペンもいつS660のようになってしまうかわからない。魅力あふれるコペンを楽しめるのは、ひょっとすると、あと少しかもしれない。
Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:DAIHATSU
Edit:Takashi Ogiyama