昨年のフルモデルチェンジを機に、国内での車名もグローバルネームへと変更した、トヨタの主力コンパクトカー「ヤリス」。昨今は、軽自動車でも電動パーキングブレーキを装備するクルマがあるなか、ヤリスのパーキングブレーキはなんと「手引き式」。
手引き式にも、利点がないわけではないのですが、電動パーキングブレーキのほうが、圧倒的に利点が多く、「一度使ったら止められない機能」のひとつでもあります。便利な電動パーキングブレーキですが、今回はなかでも「オートブレーキホールド機能」の便利さについて、ご紹介していこうと思います。
■オートブレーキホールド機能とは!?
電動パーキングブレーキ(以下E-PKB)は、(形状はメーカーによって異なりますが)指先の操作でパーキングブレーキの「作動と解除」が行うことができる装備のこと。車速やシフトノブ位置、シートベルトの状態といった情報を通信し、システム自身が動作を決定しています。最近では、Dレンジでアクセルを踏むと自動的にE-PKBを解除したり、エンジンオフでE-PKBが自動的にかかるクルマも増えてきました。
そのE-PKBのシステムを利用して、信号待ち中などの停止中にブレーキペダルから足を離しても、そのまま停止し続けてくれるのが、「オートブレーキホールド機能」です。
■オートブレーキホールド機能の使いかた
しかし、「ブレーキ離すなんて怖すぎる」というかたも多いでしょう。自動車メーカーは、あらゆるパターンを想定し、ミスが起きないよう、念入りにオートブレーキホールドのロジック設計をしています。作動条件は、メーカーごとに「オートブレーキホールドの使い方」といった名称で、取扱説明書に記載されていますので、E-PKB装備のクルマをお持ちの方は、確認してみてください。ここでは例として日産のホームページにある、オートブレーキホールドの説明をご紹介します。
オートブレーキホールド機能は、次の条件が満たされたときのみ、メーター内のオートブレーキホールド表示灯が点灯し(白色)、待機状態になる。
-運転席シートベルトを着用している
-電動パーキングブレーキが解除されている
-セレクトレバーがP位置以外にある
-急な坂道の途中に停車していない
-アイドリングストップ機能が作動していない
オートブレーキホールド機能が待機状態のとき、ブレーキペダルを踏んで車両を停止させると、オートブレーキホールド機能によって、自動的にブレーキ力が保持される。
ブレーキ力が保持されているときは、メーター内のオートブレーキホールド表示灯が緑色に点灯する。
また、発進に関しては、
セレクトレバーがPまたはN位置以外にあり、ブレーキ力が保持されている状態でアクセルペダルを踏むと、保持されているブレーキ力が解除されて発進する。
ブレーキ力の保持が解除されると、メーター内のオートブレーキホールド表示灯が白色に点灯し、待機状態に戻る。
メーカーごとに若干の違いはありますが、どのメーカーもこれと同じような作動ロジックです。この厳しい条件を、ひとつでも外れると作動しません。よって、ブレーキに故障が生じていたり、何かしらのトラブルが起きていない限り、勝手にオートブレーキホールドが解除されてしまうことはなく、「ブレーキ力保持」状態になったら、そっとブレーキを離して大丈夫です。
■ところで、HOLDスイッチはいつ使うの?
このE-PKBには、殆どの場合、作動ボタン(レバー)の横に「HOLD」スイッチがあります。オートブレーキホールドのON-OFFを切り替えるスイッチです。「そんなに便利ならば、オートブレーキホールドは常時ONでもいいのでは!?」とも思えますが、実はオートブレーキホールドがかかっていると、面倒になるシーンが稀にあるのです。それは、クリープ走行が必要なとき。
例えば、交差点内で右折待ちをしているとき、クリープ走行をしてソロリソロリと前走車へついていきたい場合がある。その時、車両が停止するたびにブレーキホールドが入ってしまうと、再発進する際、わずかですが出遅れてしまいます。同じようなシーンで、アイドリングストップ機構も煩わしいですが、アイドリングストップは、ブレーキから足を離したり、ステアリングを少し動かすとエンジンが再始動するので、発進のための準備をすることができます。
しかしオートブレーキホールドだと、アクセルペダルの操作をしない限り、ブレーキホールドの解除はできません。このときにこの「HOLD」ボタンをつかって解除するのです。筆者も、大きな交差点での右折待ちの際には、極力クルマを止めないようにクリープ走行を維持して進むか、ブレーキホールドを一旦解除するかを、必ずしています。解除をしたあとは、「ON」に戻すことをお忘れなく。
■よく理解し、上手に使おう
とても便利なオートブレーキホールド。ただ、特徴をよく理解して使用しなければ、「前に進みたいのに進めない」となり、アクセル操作が粗くなって、周囲のクルマに迷惑をかけてしまうことにも。
また、過信は禁物。筆者も、音やブレーキペダルの重さなど、ブレーキホールドがかかった合図を確認した上で、そっと足を上げるようにしています。使い方を十分に分かった上で、上手に使えるようになることが必要です。
Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:AC,TOYOTA,HONDA
Edit:Takashi Ogiyama