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BUSINESS アパレル業界の挑戦者たち

ビームス・土井地博×建築家・谷尻誠×ベツダイ・林哲平が新会社設立
副業から複業へ。進化する兼業で得られるメリットとは?

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コロナ禍によるリモートワークの増加で、俄然注目されているのが「副業」だ。働き方改革からの残業削減や有給休暇取得の義務などから、大手上場企業も副業の解禁には積極的だが、副業は「本業で目減りする手取りを補填するもの=空いた時間に効率よく稼ぐ」という視点から語られることが多いのも事実。

しかし、先月、Zホールディングス傘下のヤフーが「副業人材」を募集したことは、サラリーマンにも大きなインパクトを与えた。「自分のキャリアとスキルをどう他で活かすか」の取材を考えたとき、思い浮かんだのが、株式会社ビームスのコミュニケーションディレクター土井地博さんだ。

2足のわらじならぬ、“マルチのわらじ”を軽快に履きこなす

土井地さんは、株式会社ビームス 社長室 宣伝統括部に属して、宣伝・販促を統括するディレクターであり、本業の枠内としてラジオ番組『BEAMS TOKYO CULTURE STORY』のパーソナリティを務め、大学非常勤講師や司会業、講演などを行ってきている。

今年5月には、副業として建築家の谷尻誠氏、ベツダイ東京の林哲平氏とともに、株式会社 社外取締役を起業した。インスタグラムでは1.5万人のフォロワーを持つ。

──土井地さんのビームスでの仕事を教えてください。

土井地 ビームスに入社して21年目で、社内外の人と人、人とコト・モノを繋げていくコミュニケーションや、グループのメッセージ発信を含めて、宣伝というカタチにとらわれず、いわゆる“何でも屋”的なポジションですね。

──ビームスは、副業に対してもとても風通しが良さそうですね。

土井地 確かにビームスは独特な社風で、「いろんなことにトライしよう」という風土があり、昨年4月に副業が解禁になっています。ビームスは1976年に創業した会社ですが、2000年を越えた頃から、洋服屋という概念だけでなく、様々な企業とコラボレーションをするようになり、衣食住を広く繋げて、実績を積み重ねることで、セレクトショップからライフスタイル提案をする集団になっています。

──ビームスはカルチャーに強いという印象も醸成されています。

土井地 ビームスイズム=ビームスらしさというか、代表の設楽も「スタッフの個のチカラが集まった集団にしたい」という思いが強く、スタッフが副業をすることで得られる経験・知識をビームスの多様な魅力に繋げていくという考えです。そういう意味では、同業のアパレルの中でも、副業に関して柔軟なメッセージを発しているのではないでしょうか。

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会社を興したことで、中からの目線と外からの目線を持てるようになった

──土井地さんの中には、「本業」と「副業」の区別はありますか。

土井地 もちろん軸足はビームスで、ビームスは小売ビジネスがメインですが、今後、BtoBやBtoBtoCなど、社会の変化に即したモノを買う・売る行為を前に進めていきます。

──新会社は動き出したばかりですが、メリットは感じていますか。

土井地 例えば、新会社で、「今までは“ビームスの土井地さん”だったから相談しにくかったけど、こういう座組はできないかな?」という話があって、「それ、ビームスでもできるよ」という本業への良い影響もありますね。いろんな人からの仕事の相談が増えていて、ビームスと新会社の両方を持つことでそれぞれにメリットが生まれています。

──そういうメリットは土井地さんのプラスになっていますか。

土井地 僕はオン・オフどちらもアンテナを張るのが好きなタイプで、夢を語るのが好きです。社会がどんどん変化する中で、物差しがいろいろ変わってきて、社会の変化に合わせて自分らしさをどう活かしていくかはずっと考えていました。会社の設立はあくまで通過点ですが、本業と副業を上手く使って、自分も成長したいと思っています。

──特にご自身の中で変わったことはありますか。

土井地 ビームスにいながらビジネススクールで学んだり、次世代に繋ぐために大学で教鞭を執ったり、常日頃から「学ぶ・伝える」はやっていましたが、さらにドライブをかけるために、自分で「組織を作っていく」ことに挑戦したのが起業です。まだ会社設立から日は浅いですが、ビームスを中からの目線と、外からの目線で見ることができて、外からの目線でどういうことができるかにもトライしていきたいですね。

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左から、BETSUDAI Inc. TOKYO CEOの林哲平氏、建築設計事務所 SUPPOSE DESIGN OFFICE 代表の谷尻誠氏、土井地博氏

時代は変わっても、未開の地を切り拓いていくのは結局、人だ

──新会社は今年5月1日設立ですが、どういう経緯で集まったんですか。

土井地 共同代表の建築家の谷尻誠さんは、建築以外の街や暮らしのデザインなど個人でも仕事を受けていて、僕も「異業種とのかけ算」をカタチにしたいと思ったのは2年ぐらい前です。

──設立のコメントの中に「時代に沿った副業です」とありましたが、その意味は。

土井地 今回のコロナ禍によって、なくなったり、役目が終わる仕事が増えると思いますが、新しく生まれる仕事もあります。これまでの30年ぐらいで、人と人の関係は、人と人と機械(テクノロジー)になり、生活が便利になって、情報伝達が変わる中での会社設立になりましたが、時代の大きな変化のときに、「時代に寄り添ったビジネスができるチャンス」ということで、「時代に沿った副業です」とコメントしました。

──新会社のメインビジネスを教えてください。

土井地 現在は、外部コンサルタント・プロデュースとオンラインサロンの2軸となります。コンサルタント・プロデュースは、生活に直結するモノ全般との関わりで、オンラインサロンは現在、第二期の募集を行っています。

──オンラインサロンの手応えはどうですか。

土井地 自分がこの歳になって、地方在住の18歳の学生と進路を考えたり、60歳の人と夢を語り合うなど、なかなかない経験ができて、コミュニケーションの場として面白いし、可能性も感じています。

──まさにテクノロジーによるコミュニケーションですね。

土井地 ルネッサンスや産業革命、明治維新とか、結局、未開の地を切り拓いていくのは人なんですね。今、誰もが良いチャンスや良い体験を求めていて、自分も、「多くの人に良い影響を与えられるんじゃないか」という欲が、稼ぐことより強くて、可能性も感じています。今は休日に新会社の仕事をしているので、自分らしさが出る時間やスペースが「副業」という言葉にあたるのかなと思っています。

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今回のコロナ禍で思ったこと、感じたこと、変わったこと

──まだまだコロナ禍の中での仕事が続きますが、何か変わったことはありますか。

土井地 自分の頭の中のロジックやシステムが大幅に変わりましたね。シンプルに言うと、インプット/アウトプットが増えました。これまでは、自分が学んだことを自分の中で消化するインプットが強かったですが、自分の経験を元に、自分の言葉に置き換えて人に何かを伝えるアウトプットを強く意識するように変わりました。

──アウトプットに、副業は最適の出口ですね。

土井地 コロナ禍で大変な状況にある人は多いですが、もともとポジティブな自分は、よりポジティブになりましたね。今回のコロナ禍で思ったのは、ビームスは明るく前向きで、楽しい集団・企業で、みんなが愛している会社だなということ。副業の奨励も含めて、環境に恵まれていると本当に思います。

土井地博
(株)ビームス 執行役員 宣伝統括部 部長 兼 コミュニケーションディレクター
1977年生まれ。大阪エリアのBEAMSショップスタッフを経て、メンズPR担当として上京。PR業務を行いつつBEAMSが実施するさまざまなコラボレーション事業に携わってきた他、FUJI ROCK FESTIVALをはじめとした各種のイベント協賛も手掛ける中心人物として長年業務を行っている。現在はBEAMSの宣伝・販促を統括するディレクター。今年5月1日に建築設計事務所 SUPPOSE DESIGN OFFICE 代表の谷尻誠、BETSUDAI Inc. TOKYO CEOの林哲平と株式会社 社外取締役を設立した。

株式会社 ビームス

Text:Makoto Kajii



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