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ウィズコロナ時代を乗り越えるために、三越伊勢丹が始めた「シームレスサービス」の未来像

2020.7.25 2020.7.25
2020.7.25

突然襲ってきたコロナ禍によって、ファッションや飲食にまつわる「接客」サービスは一変してしまった。

特に趣味性の強いファッションは、好きな店やブランドの気に入った販売員と話をして、仲良くなって、お互いの好みを把握しながら、シーズンのおしゃれを楽しむという、まさに「密」を絵に描いたような関係だったが、“新しい生活様式”を遵守しようとすると、どうしても店の滞在時間を短縮し、接客も手短に……となってしまう。

これまで私たちが楽しんでいた“密度の濃い時間”が味わえなくなった今、百貨店の雄、三越伊勢丹がウィズコロナ時代に打ち出したのが、「三越伊勢丹のシームレスサービス」だ。

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6月9日にリリースされた「三越伊勢丹アプリ」のサービス内容
オンラインとオフライン=店舗を“シームレス”に繋いでいく

4月7日の緊急事態宣言の発出により、首都圏の三越伊勢丹各店舗が臨時休業したのは、自粛を余儀なくされた一つの象徴的な出来事だった。伊勢丹新宿店に勤める社員も自粛生活を送っていたが、今回取材したデジタル推進部シームレス担当部長の升森一宏さんは、「三越伊勢丹のシームレスサービス」のローンチ準備のためにゴールデンウィークに必要に駆られて出社していたそうだ。

「ゴールデンウィーク中の夜9時頃、新宿駅へ向かう新宿通りに誰もないことに驚いて、これだけ一気に人がいなくなるのかと、思わず写真を撮ってしまいました」と振り返る。それから首都圏の基幹店舗が営業を再開したのが5月30日で、「来店されたお客様の顔を見てホッとしましたが、自宅で受けられるサービスの必要性を感じました」と付け加えた。

升森さんが関わった「三越伊勢丹のシームレスサービス」とは、簡単にいうとオンラインとオフラインの融合で、ECサイトの三越伊勢丹オンラインストアと、サービスやレコメンド記事などをまとめた三越伊勢丹アプリを顧客体験提供のプラットフォーム(基盤)とした。特にアプリは大幅に刷新して、ともに6月9日にリリースされた。

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デジタル推進部シームレス担当部長の升森一宏さん
グループを挙げてのデジタル戦略を加速させたコロナ禍と新しい生活様式

──三越伊勢丹オンラインストアが、それまでの三越と伊勢丹の暖簾(のれん)ごとに分かれていたサイトがひとつにまとまって、とても見やすく簡潔になりましたね。

升森 まず、「ITと店舗、さらに人の力を生かした新時代の百貨店(プラットフォーマー)」という施策は、杉江俊彦が三越伊勢丹ホールディングスの社長になってから掲げた成長戦略で、1年以上前から計画は進められていました。

──ということは、6月のコロナ自粛明けのシームレスサービスのローンチは、たまたま時期が合ってしまったということですか。

升森 そうですね。自粛前からECサイトから入ってくる購買行動のシェアは上がってきていて、ずっと準備は進めていましたが、結果として解除明けのタイミングでのローンチとなりました。前向きに考えれば、5~10年後に振り返って、「あの時がターニングポイントだったね」と言えるかもしれませんね。

──それは御社のデジタル戦略にコロナ禍が重なって、改革が加速したと。

升森 たとえば、オンライン会議のアプリは、コロナ禍の中でのリモートワークで爆発的に使われて、一気に有名になりました。同じように、ショッピングという行動も確実にオンラインの比率が上がってくるはずで、お客様の百貨店への期待も含めて、デジタルシフトは必然の流れだと捉えています。

──ということは、まさに「今必要」なサービスということですね。

升森 コロナ前に想定していた3年後、5年後の世界が、一気にこの2ヵ月で押し寄せた感覚はあります。

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「動画接客サービス」のランドセル販売
オンラインストアとアプリの相乗効果で、買い物の選択の幅を広げたい

──三越伊勢丹アプリをダウンロードしましたが、スッキリしたデザインにショッピングやサービス、クーポン、マイページなどの項目が分かりやすいです。

升森 「気持ちよく快適にスムーズに買い物をしていただく」ことを実現するために、サービスの試着予約や接客予約など“オフライン=店頭サービス”を強化していくのが ひとつの狙いです。さらに、「人を全面に打ち出していく」のもテーマで、お客様の関心事やトレンドにあったオリジナルのキュレーション記事なども力を入れていて、バイヤー経験者がコンテンツ制作を担当するなど、独自の伝え方や、人の魅力を編集しています。

──今回のシームレスサービスはメディアでも取り上げられましたが、「動画接客サービス」のランドセル販売の手応えはいかがですか。

升森 動画接客サービスは、店頭のスタッフの「やりたい」という声にも押されてスタートしました。ランドセル販売は、「忙しいイクメンでも在宅でランドセル選びの接客がZOOMで受けられるオンライン接客サービス」として話題になり、問い合わせの半分ほどがオンラインストアでの購買に結びついていて、想定よりも成約率が高いですね。私たちにフィットしたサービスだと手応えがあるので、他の商品にもステップを踏んで拡大していきたいと思っています。

──それはオンラインでも接客サービスは変わらないという手応えですか。

升森 そうですね。実力のある販売員は店頭の工夫をオンラインにしっかり転換できるので、接客サービス自体は変わりません。

──ただ、百貨店に慣れ親しんだ高齢者や伊勢丹のファンには、オンラインだと「リアルな空気感」がなくて、物足りないのでは?

升森 今の50~60代の方はスマホを普通に使いこなしていますし、オンラインは見る場所の制約がないので可能性は無限にあると思っています。実際、接客サービスのトライアルで、お客様に店頭に来ていただいて、海外のアクセサリーデザイナーとZOOMで対話するという動画接客をして好評でした。

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メンズ館地下1階=紳士靴で行っている3D計測
忙しいFORZA STYLEの読者をサポートする、靴のマッチングサービス

──三越伊勢丹のデジタル施策の中で、FORZA STYLEの読者にフィットするサービスを教えてください。

升森 ぜひ一度体験していただきたいのは、メンズ館地下1階の紳士靴で行っている、「YourFIT365 ISETAN MEN’S(ユアフィット365 イセタンメンズ)」です。これは、紳士靴の3D計測と商品レコメンド&マッチングサービスで、15秒の3D計測でご自身の足形データがデジタル可視化され、店頭の商品から自分の足にあった靴が自動でレコメンドされます。さらに、計測結果を三越伊勢丹アプリに保存できるので、オンラインでも最適な一足をお勧めできます。

──店頭で一度計測すれば、データをもとに最適なドレスシューズを探し出せるということですが、オフライン=店舗での対応は?

升森 もちろん店頭のシューカウンセラーによるコンサルティングサービスを受けることで、より自分の感覚や好みにあった靴をお選びいただけますし、店頭での試着も歓迎です。

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三越伊勢丹アプリ内の「YourFIT365 ISETAN MEN’S」を示す升森さん

──「店頭での接客の時短」という風潮にはぴったりですね。

升森 今後は、ネット注文商品を受取り専用のピックアップポイント(宅配ボックスやコンビニなど)で消費者自身が受け取ることができる「クリック&コレクト」をやりたいですね。

──アメリカのEコマースで注目されている新サービスですね。

升森 たとえば、バレンタインデーのお返しを購入される3月14日の前日の午後は、伊勢丹本館地下1階の食料品売り場には、サラリーマンの方が大行列を作っていますが、事前にオンライン注文をしてお渡しできるようなサービスを考えていきたいですね。

──オンラインだと、時短になるし、「記念日の買い忘れ」がなくなると思います。

升森 また、メンズ館の名物である、海外のデザイナーやテーラーを招いてのトランクショーも現状難しいので、現地の作り手と店頭を繋ぐ、デジタルトランクショーなども検討しています。

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「YourFIT365 ISETAN MEN’S」の3D計測がビジュアルで確認できる
ウィズコロナ時代の「百貨店の存在意義」とは

──今後、オンラインだけでなく、オフライン=リアル店舗も変化を余儀なくされると思いますが、百貨店はどう生き残りをかけるのでしょうか。

升森 百貨店が提供している価値そのものは、急に変えようとすると私たちの存在理由や魅力がなくなってしまうので、商品や接客、サービスは変えずに、丁寧に伝えていく方法としてデジタルを活用します。もちろん、「しっかり接客して欲しい」という方には選択肢を用意して、一番快適な体験を提供できるようにするのが重要です。

──デジタルに対しての拒否反応は少ないと。

升森 動画接客サービスの反響や、チャットのご利用などを見ていると、お客様も楽しんでいますね。特にチャットはコロナ前の5倍ほどご利用があり、気軽に在庫の問い合わせなどもあって、ニーズは確実に増えています

──確かに、お客様は「手短にスムーズにショッピングをしたい」というトレンドになっています。

升森 実店舗の方は、さらに「体験」を強化して、サービスや空間、品揃えや環境も変わっていくと思いますが、「伊勢丹へ行って買い物したい」と思っていただける場を作っていきたいと思います。

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こちらも刷新した三越伊勢丹オンラインストア

【問い合わせ】
伊勢丹新宿店
東京都新宿区新宿3-14-1
03-3352-1111(大代表)

三越伊勢丹オンラインストア

Photo:Riki Kashiwabara

Text:Makoto Kajii

Author profile

梶井 誠
梶井 誠
Kajii Makoto

今はなき講談社のメンズファッション雑誌『Checkmate(チェックメイト)』編集部のファッション班を経てフリーランス。セレクトショップのカタログやメンズ雑誌のファッションページの取材・原稿を担当。SKE48箱推し、フィロのス・奥津マリリ推し、ジュビロ磐田サポーター。1961年福井県出身。©Seo Hiroshi

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