「ニューノーマル」と僕たちはどう向き合っていくべきか
世界経済を根底から揺るがす今回のコロナ禍は、マクロ的には国のあり方や資本主義の考え方、ミクロ的には働き方や家庭環境など、これまでの常識を大きく変えるきっかけになるかもしれません。
世界規模では現時点で収束の目途がたっていないことからも、コロナ前には戻らないでしょうし、ウィズコロナとして新しい生活様式が求められます。今後はファッションにも、そんな「ニューノーマル」な生き方を考えながら、向き合うことが必要になりそうです。
アイテム
ジャケット/K-3B
Tシャツ/クロスクローゼット
ショーツ/K-3B
サングラス/レイバン
時計/ベル&ロス
靴/ペルノイ×ゼウス
緊急事態宣言の解除に続き、都道府県をまたぐ移動が全国的に緩和されると、いつもの生活が戻ってくるかのように錯覚してしまいますが、まだまだ油断は禁物です。では、これからの生活に求められる「ニューノーマル」と、僕たちはどう向き合っていくべきなのでしょうか。
僕の場合、3月末からの自粛生活でスーツを着る機会が激減しました。とはいえ、在宅ワークでもオンラインでの取材や会議はありますし、いわゆる“家着”のような格好は はばかられます。このへんの勘どころは、本当に難しいですよね。家にいるのに かしこまった感じは変だし、かといってだらしなく見えるのは避けたい……。
そこで、こんなスタイルはどうでしょう。ジャケットと短パンは、僕がクリエイティブディレクターを務める「K-3B(ケースリービー)」のセットアップ。これは石川県にある世界的な合繊テキスタイルメーカー、カジグループが手がけるブランドですが、すべてのアイテムが自由自在に組み合わせられるマルチセットアップというのをコンセプトにしています。
というのも、無数にあるデザインや素材、色柄の組み合わせのなかからスーツやシャツ、ネクタイを選んでコーディネイトするのって時間がかかるじゃないですか。それが毎日のことなると、その時間は膨大になってしまいます。忙しい朝の時短のためにも、どれをどう組み合わせてもカッコいいセットアップがあればいいのに……。K-3Bは、そんなアイデアが出発点になりました。
ジャケットは、薄くて軽い、4WAYストレッチ機能のナイロン・ポリウレタン素材を使った2つボタンのモデル。ベントや袖ボタンは省き、さらに縫い目を極力なくすことで、生地がもつパフォーマンスを最大限に楽しめるようになっています。脇のコンシールファスナーを開けるとベンチレーション機能があり、蒸し暑い夏にもぴったり。カットソー感覚で着られるのに、見た目はジャケットそのものですから、オンライン会議などの際でも相手に失礼にはなりません。
かたや、モニターに映らない下半身はリラックスしておりまして……。1プリーツ入りでウエストにはドローコードを配したカーゴショーツを選びました。仮にこれが対面の会議の場合でも、スラックスタイプもラインナップしているので、ボトムスはシーンや用途に合わせていくつかバリエーションを揃えておけば安心でしょう。瞬時にコーディネイトできるように、素材は一種類、色は黒のみというのも こだわった点です。
ジャケットの中に着たのは、僕がコラボでつくったクロスクローゼットの白T。足元には盛岡の菅原靴店によるペルノイ×ゼウスのサンダルをコーディネイトしています。在宅ワークが増えたからといって、外出がゼロになるわけではなく、近所に食料品を買いに行ったりするときってあるじゃないですか。そんなときは、ジャケットを脱いでこのサンダルを合わせて出かけるのが定番です。
今回の肝は、すぐに洗濯できて、すぐに乾くこと。ウイルスがどこに付着しているかわからないので、コロナ禍以降は外出したら こまめに洗える洋服を選ぶようになりました。その点、カジグループのつくる素材は丈夫だし、洗濯で色褪せしにくいのも魅力なんです。
機能的で、タフで、シンプル。K-3Bを立ち上げるとき、コレクションを説明するのに、“ビジネスシーンにおけるスマートに戦うための服”という表現を使ったのですが、どことなくミリタリーのユニホームから影響を受けているのも特徴です。
そんなわけで、時計は男臭さ全開のベル&ロスの「BR01-94」をチョイス。僕にとっての「ニューノーマル」なファッションは、自身を守るための防護の役割を備えていることも大事な要素のひとつになりました。
今回のスタイルのキモは……。
●すぐに洗えて、すぐに乾くことがこれからの服選びの常識に。
●機能的でタフ&シンプルな男らしさが色気を奏でる!?
●モノトーンの組み合わせで、コーディネイトに悩まない。
●その分、余った時間は、自分が豊かな気持ちになるために使う。
●自粛生活は、無理せず、油断せず、続けることが大切。
Photo: Ikuo Kubota (OWL)
Styling&Model:Yoshimasa Hoshiba
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