昔々、「東芝ファミリーホール 特ダネ登場!?」ってバラエティがあったのを覚えていますか?
1970年代のテレビ番組だから、僕の記憶も曖昧ですが、全身を覆うマントを羽織って登場した人の、奇想天外な職業を当てるクイズだったんです。で、このスタイルも、コートで覆い隠したエロスがダダ漏れしていません?
アイテム
コート/ES:S
スーツ/B.R.ショップ
シャツ/アルコディオ
ネクタイ/タカシマヤ スタイル オーダーサロン
チーフ/ムンガイ
メガネ/オリバーピープルズ
チーフ/ブルネロ クチネリ
ベルト/ジョンロブ
時計/ヴァシュロン コンスタンタン
リング(右)/フィクサー
リング(左)/アスプレイ
バッグ/エルメス
傘/フォックス・アンブレラ
ソックス/グレン・クライド
靴/WH
賢明な『FORZA STYLE』の読者なら、すでに気がついてしまったかもしれませんが、このコーディネイトは前回とほぼ同じ……。むしろ、違いがわかったほうがマニアックかもしれません。
そう、これは最近よく言っている「軸はぶらさず、細部は変える」の典型例。だって、コート以外はまったく同じ組み合わせですから(笑)。しかも、コートは前回と同じデザインのES:S(エス)のトレンチ。間違い探しみたいですが、どこが違うかわかりますか?
そこの人、はい正解! そうなんです。素材が高密度ナイロンタフタからウールツイルに、色がネイビーからブラックに変わっているんです。ね、薄手のナイロンのドレープと比べ、素材が厚手になった分、男らしさが増した感じがしませんか?
とはいえ、ほどよく丸みのあるビッグシルエットで、今っぽい柔らかさや軽やかな雰囲気も併せもっている点は さすが。勢い余ってこちらの素材もこのブラックのほか、シブめのブリティッシュグリーンもついつい買ってしまいました。つまり、同じかたちのトレンチコートが、我が家のクローゼットには4着! 「姉さん、事件です」(ドラマ『HOTEL』の高嶋政伸演じる赤川風に。わかるかなあ……)。
前回は、ウエストベルトをギュッと絞っていましたが、今回はベルトを留めずにハンドウォーマーポケットに突っ込んでいます。そうするとAラインっぽいシルエットになって、ある意味 女性らしい優しい印象になるというか。ちょっと油断させる(隙を見せる?)イメージでしょうか。
こういったコートの存在感が圧倒的なコーディネイトでは、あえて細部に撒き餌のように突っ込み甲斐のある小物をちりばめるというテクニックをすでにお話ししましたが、そもそも何でこんなにトレンチが好きなのか考えてみたんですよね。
ダブルブレストって自分のなかでは将校っぽいイメージがあって、それがコスプレと結びつくんですよ。フツーっぽいのに、コスプレ気分を楽しめるのがトレンチの魅力のひとつかなと。ナイロンのほうが 雨の日用だとしたら、こちらのウールは 雪の日用。憂鬱な天候も、気持ちの持ちようで、ポジティブになれるというか。
まあ、根底にあるのはネイビーブレザーと同じで、イヤらしさのカケラがまったくない、むしろ武骨とか愚直といった言葉が似合いそうな真面目な洋服なのに、ちょっと放っとけないような隙をつくるのがいいと思うんです。これ、狙っているのがバレると かなり寒いので注意が必要なんですけど、狙っているのかいないのか意味不明なゾーンが狙いどころ。
でも、これが正直、難しい……。僕自身も未だ修行中の身ではありますが、女性にはクールに振る舞いたいけれど、かまってもほしい。男心の不思議と申しますか、誰かわかってくれますかね? まぁ、いつもながらこれも妄想なんですが(苦笑)。
今回のスタイルのキモは……。
●同じように見える組み合わせを、あえて繰り返すことで完成度を上げる。
●そうやっているうちに、いつの間にか自分のスタイルになる。
●真面目に見える服こそ、隙をつくるとそこにエロスの神が降臨。
●でも、コスプレってやっぱりエロいよね。
●スーツはいつものグレイなので言及なし!
Photo: Ikuo Kubota (OWL)
Styling&Model:Yoshimasa Hoshiba
6冊目の書籍が発売しています。洋服から、ジュエリー、腕時計、ライフスタイルまで。僕が日頃から愛する大人の男女におすすめしたいブランドの逸品について書いています。読んでない方はぜひ!
干場義雅が愛する
「究極のブランド100+5」(日本文芸社)
5冊目は、1冊目の書籍の内容を改稿し、本質的な服装術を知らない新社会人から肩書きを持つ大人まで使える身に纏う処世術について書いています。読んでない方はぜひ!
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4冊目の本では、女性のエロサバなスタイルについてまとめています。女性はもちろん、男性が読んでも面白いのでぜひ。奥様にもすすめてくださいね。
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「女性のお洒落」
(ディスカバートゥエンティワン)
3冊目の書籍は、難しいとされる大人のカジュアルスタイルについて書いています。読んでいない方はぜひ!
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「究極の私服」
(日本文芸社)
2冊目の書籍は、色気についてです。 普通に見えて、なぜか人を惹きつける男の共通点について書いています。読んでいない方はぜひ!
一流に学ぶ
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(宝島社)
1冊目は、スーツの着こなし術から世界の一流品選びまで、基本的なことやお洒落の本質について書いています。読んでいない方はぜひ!
世界のエリートなら誰でも知っている
「お洒落の本質」
(PHP出版)
【エロサバ】-Hoshipedia
「エロサバ」とは、エロいコンサバの略で、干場の哲学により生まれた造語。シンプルでベーシック、コンサバティブな洋服を着ているのに、なぜかエロく見えるスタイルのこと。例えば喪服の女性。成熟した大人の女性が喪服を着ていて、メイクもナチュラルで抑制しているのに、不思議と色っぽく見えるスタイル。例えば、普通の白いシャツを着ているのにも関わらず、胸元のボタンの開け方や袖口のまくり方でSEXYに見えるスタイル。粗悪な素材でデザインが変わっているシャツでは駄目。上質な素材でベーシックなシャツだからこそ、崩して着こなしても上品さが保てるのです。男性で例えるなら、仕立てられたグレーの無地のスーツを着て、上質な白シャツに黒の無地のネクタイのような極めてコンサバティブなスタイルをしているのに、内側から大人の色気が香るスタイルのこと。