FASHION ― 誰がアパレルを殺すのか

デジタルテクノロジーを取り入れたオーダースーツとは? 三陽商会が新ブランドを始めた理由

2019.10.17 2019.10.17
2019.10.17

現在のアパレル小売業には、リアル店舗とオンラインストアの融合による「顧客エンゲージメントの向上」が不可欠と言われているが、さらに「ブランド体験の価値」を高めようとするのが、三陽商会初のパーソナルオーダースーツブランド「STORY & THE STUDY(ストーリー アンド ザ スタディー)」だ。

三陽商会の70年を越えるモノ作りの技術に最先端のデジタルテクノロジーを活用して、これまでにないフィット感の着用感と、シームレスな購買体験を実現するという。企画課長の猿渡(えんど)伸平氏にお話を伺った。

D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)の“最後の大物”

9月6日にグランドオープンしたばかりの「GINZA TIMELESS 8(ギンザ・タイムレス・エイト)」の6階でエレベーターを降りると、手前に4台のタブレットが並び、その奥にホテルのラウンジのような伸びやかな空間が広がる。両側にメンズとウィメンズの洋服のサンプルがあることで、ここがブランドショップだということがやっと理解できる。

FORZA STYLEのこの連載では、スーツを中心とするIoT活用によるカスタマイズ事業の「FABRIC TOKYO」「KASHIYAMA the Smart Tailor」「UNBUILT TAKEO KIKUCHI」などを紹介しているが、ついに“最後の大物”三陽商会が新ブランドを立ち上げた。

企画課長の猿渡氏は、「銀座界隈にあるブランドを回ってスーツを作ってみましたが、痛感したことがあります」という。「それはパターン(型紙)の大事さで、平面の生地を立体的に仕上げるための良いパターンと、そのパターンを活かす縫製では、間違いなくうちのはめちゃくちゃ良い。自信を持ってビジネスに臨めるスーツやシャツを提供します」と胸を張る。


ショップの入り口では特大サイズの「ミラーサイネージ」がお出迎
ブランド名に表れている、他社にないサービスや体験の提供

――ブランド名の「STORY & THE STUDY」にはどういう思いを込めていますか。

猿渡 まず、新ブランドの立ち上げに際し、「本当に良いものを作ろう」という私たちの想いを根幹にしています。「STORY」は、三陽商会が70年以上の歴史の中で培ってきた高い技術のものづくりを、「STUDY」は、ものづくりの技術を常にアップデートさせるための進化=デジタルテクノロジーを、それを繋ぐ「&」は、服づくりの基礎である縫い針をモチーフにしたロゴにしています。

――他社の取材でもビジネスマンの「スーツ離れ」は必ず話題に出ますが、三陽商会でも危機感を持っていますか。

猿渡 確かにビジネスウェアのカジュアル化や、それに伴うスーツのコンフォート化などは年々進んでいて、いわゆる既製服から多少の補正を入れるパターンオーダーへの移行は見られ、パターンオーダーやオーダースーツのマーケットは伸びています。

――そういう変化を猿渡さんはどう感じていますか。

猿渡 ビジネスウェアに限らず、自転車のパーツやスマホケースなど、ライフスタイル分野ではカスタマイズが当たり前です。「自分のこだわりを表現したい」という思いと、「カスタマイズ=趣味」という風潮になってきています。6階の入口にタブレットを置いているのは、スーツビギナーの方にもタブレットの操作で「スーツ作りを遊んでもらう」感覚を感じてほしいと思っているからで、デジタルネイティブな人が使い慣れたコミュニケーションツールからエントリーすることを狙いとしています。


左上から時計回りに、リラクシングトラッド、ブリティッシュオリジナル、ニューテーラード、イタリアンモダンの4つのスタイル
三陽商会のメンズのノウハウがギュッと詰まった4スタイル

――確かにタブレットを操作していると、「こんなに選択肢があって、補正が効くのか」と驚きます。

猿渡 スーツは、リラクシングトラッド、ブリティッシュオリジナル、イタリアンモダン、ニューテーラードの4つのスタイルを基本としています。いずれも三陽商会がこれまで培ってきたノウハウが詰まったモデルで、パターンの良さには自信があります。

――「STORY & THE STUDY」の強みを教えてください。

猿渡 スーツは、福島にあるテーラードの自社工場「サンヨー・インダストリー」で生産しています。工場ではスーツ1着の工程に約70人もの職人の手が加わり、個々の体型に合わせた最適な着心地と美しいシルエットを作り出します。

――そこにデジタルテクノロジーが合致するわけですね。

猿渡 人の手のクラフツマンシップに加えて、最先端のデジタルテクノロジー「3D Fitting Analyzer」を活用して、従来にないフィット感の着用体験を提供します。公式オンラインストアで2着目のオーダースーツをご注文いただくには、店頭での採寸データが必要となります。

――来店から納品までの流れを教えてください。

猿渡 まず来店の予約をしていただきます。来店いただき、フィッティングルームで8ヵ所の採寸を行い、お客様用タブレットで正面と横の写真を撮ります。これは、肩の傾斜など「体型」の特徴を可視化するものです。

――「STORY & THE STUDY」では“肩傾斜”にポイントを置いているように感じます。

猿渡 「STORY & THE STUDY」はフルオーダーではないですが、ジャケットは肩周りで決まるので、プロの目によるパーソナライズな対応を加えています。さらに、ジャケット+パンツで69ヵ所の補正が可能です。最終的にお客様の好みを聞きながら補正を加えていきます。

――69ヵ所も補正が可能だと、補正を積み上げていくと高くなりそうですね。

猿渡 補正をフルオプションしてもプラス1万5000円(税抜)までで収まります。商品は最短約2週間でお渡しになります。


ブランドの指揮を執る企画課長の猿渡伸平氏
体型にフィットし、好みを反映したスーツを着るメリットとは

――スーツの他にカスタマイズできるアイテムは?

猿渡 スーツはツーピース、スリーピースをはじめ、ジャケット、単品パンツ、シャツ、さらにネクタイ、ベルトまでオーダーできるので、ビジネスアイテム一式を揃えることができます。女性のビジネススーツなどもあるので、ぜひパートナーの女性にお薦めください。

――オープンして1ヵ月ほどが経ちますが、反響はいかがですか。

猿渡 30代の男性が多いですね。次に40代、50代、20代のビジネスマンです。全体の2割弱が女性のお客様で、「女性が仕事で着るスーツ」の需要の高さにも手応えを感じています。

――身体にフィットしたスーツを着るメリットは何ですか。

猿渡 FORZA STYLEの読者の男性はおわかりでしょうが、スーツは「自分を表現する勝負服」です。スーツは自分がどう見られたいかを表現するもので、きちんとしたものを着ている人はきちんと見えます。ビジネスパートナーとして選ばれたいなら、体型にフィットしたスーツをご着用ください。

――では、スタートしたばかりの「STORY & THE STUDY」ですが、どういう成長を描いていますか。

猿渡 「STORY & THE STUDY」のビジネスウェアを通じて、お客様のコミュニティを作りたいですね。それと、たとえば尾州の機屋(はたや)など産地を活性化するコミュニティも作りたい。共感が生まれて広がるようなファン作りにまず取り組みます。


ウィメンズのオーダーアイテムも豊富に揃う


STORY & THE STUDY(ストーリー アンド ザ スタディー)

東京都中央区銀座8-8-9 GINZA TIMELESS 8 6階
TEL:03-5537-6136
http://www.story-study.com
Instagram:@story_and_thestudy

Photo:Riki Kashiwabara

Text:Makoto Kajii

Author profile

梶井 誠
梶井 誠
Kajii Makoto

今はなき講談社のメンズファッション雑誌『Checkmate(チェックメイト)』編集部のファッション班を経てフリーランス。セレクトショップのカタログやメンズ雑誌のファッションページの取材・原稿を担当。SKE48箱推し、フィロのス・奥津マリリ推し、ジュビロ磐田サポーター。1961年福井県出身。

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