昨年は各社から男性用コスメが次々と登場し、「メンズコスメ」がちょっとしたブームとなっていたことをご存じだろうか? その中でもひときわ異彩を放っているのが、資生堂「uno(ウーノ)」だ。1992年に誕生した、男性にはおなじみのブランドだが、最近はユニークな商品はもちろん、メンズ美容の概念を再構築したマーケティング戦略で大ヒットしているという。その内容を紹介しよう。
誰もが驚いた、メンズ用
BBクリームの異例の大ヒット
ドラッグストアのバイヤーから「ユニークな商品がある」と聞いたのは今年の春。店舗を限定して販売している商品が売れに売れ、常に品切れ状態。入荷を待ち望む男性が多いという。メンズコスメでそんな現象、過去にも聞いたことがなく、美容業界でも話題になっている。それが資生堂unoのBBクリーム「ウーノ フェイスカラークリエイター」だ。
「ウーノ初のBBクリームがこんなに売れるとは思いませんでした」と話すのは、2017年にウーノの担当になり、商品開発からプロモーション戦略まで全てを引き受ける堀一臣さんだ。店舗限定という形で半ば実験的に始めた試みだったが、予想を反する反響の高さに驚いたという。
そもそもBBクリームのBBとは、Blemish(傷) Balm(軟膏)のこと。1品で下地や日焼け止め、肌トラブルカバーなどいくつもの効果があることから、女性たちに爆発的に広がった。そのBBクリームの男性版が大ヒットということは?
「外見を良くすると仕事でのパフォーマンスも上がり、メリットが多いと気づき始めている人が増えているからではないでしょうか」と語るのは、資生堂の一部スキンケアとメンズブランドを統括する川畑麻美さん。
外見を良くすると仕事においてもプラスになる? 以下、詳しく解説していく。
必要なのは男性の意識改革。
「肌マネジメント」の啓蒙活動が鍵
ここでとあるデータを紹介しよう。株式会社リッチメディアが、2018年2月〜3月に、世界9ヵ国の都市部に住む20代〜30代のビジネスマン2786人に行った「仕事と見た目調査」だ。この中で、日本はスキンケア意識が進んでいそうなイメージランキングで2位、しかし実態は最下位という結果が出たという。
イメージと実態の乖離、この理由は?「やはり“見た目”へのこだわりでしょうか。海外では『セルフマネジメント』の一環として、肌のお手入れをする人が多いんです。でも日本では、まだその意識は薄く……。ウーノではこの調査をもとに、日本男性の美容習慣の底上げを提唱していくことにしました。それが『美ジネスマン』戦略です」(川畑さん)
具体的な施策として、肌マネジメント研修と題し「男性スキンケアセミナー」を定期的に開催。主に肌マネジメントの大切さとお手入れ方法を教えている。
「『肌の調子がよくなり、仕事にも自信を持てるようになった』『どんなシーンでも堂々と振る舞えるようになった』など、受講者たちのポジティブな反応を目の当たりにし、私たちが目指そうとしている“美ジネスマン”の啓蒙活動は間違ってなかったと感じました。男性美容市場はポテンシャルが高く、スキンケア習慣の意識改革をしていけば、市場は必ず活性化すると読んだんです」(川畑さん)
男性の意識改革。きっかけは
オールインワンジェル
ウーノの代表商品といえば、2016年に登場した男性用オールインワンジェルクリーム「ウーノ クリームパーフェクション」だ。
これによりウーノは、メンズ美容のスキンケアカテゴリーにおいて2位にまで浮上(2019年上期現在)。それまでは長いこと5〜6位だったという。
「ヒットの要因は、何といっても機能性です。これひとつで化粧水、乳液、美容液、クリーム、マスクの5つの機能があり、お手入れが簡単で効果実感を得られるアイテムとしてヒットしたんです」と語るのは、PRを担当する小林智美さん。
しかしヒットの要因はモノの良さだけではない。この製品を発売するタイミングでウーノはブランドイメージを刷新し、定着させたのだ。「機能性の良さ以上に『おしゃれでカッコイイブランド』と認知されるように、CMやプロモーションの表現の仕方を工夫したんです」と川畑さんは加える。
「以前は、“カッコいい=モテる”というイメージでしたが、ここ最近は“カッコいい”の定義が変わってきていますね。実は過去に、女性にモテるという要素を打ち出したプロモーション動画を作ってみたことがあったのですが、動画の評判は良くても商品購入には至らず、結果、失敗に終わりました(笑)」と堀さん。
翌年、この経験を踏まえ“カッコいい”の定義を再構築したという。「『女性からモテたい』という要素を排除して、『部下から慕われる上司』『あんな上司になりたい』というようなカッコよさを全面に出することにしたんです」
竹野内豊さんや窪田正孝さん、野村周平さんなど各年齢層の人気俳優を起用し、新しい定義の「カッコよさ」を全面に押し出したスペシャルムービーを制作したところ、見事に的中。男性からの共感を得ることに成功したという。特に30代〜40代の男性からは「乾燥や肌荒れ、シミなどのケアをしないと恥ずかしい」と意識改革にも繋がり、売り上げにも貢献できたという。
「SNSの普及も一つの要因ですが、近頃では男性も“肌マネジメント”を行うことがプラスにつながるという認識が広まってきました。とくに30代以降に顕著に現れています。それは今後、さらに加速していくと思います」(川畑さん)
ヒゲ、クマ、ニキビ跡……
“メイク感なく隠せる”のが
成功の秘訣
とはいえ、男性でも化粧水を使っている人は相当数おり、オールインワンジェルのヒットは理解できる。しかしBBクリームは、どちらかと言えばメイク寄りなアイテムだ。
「男性だって肌悩みはあるんです。何とかしたいと思っているけど、スキンケアのお手入れだけではどうしようもないんですよね。僕もそうですが、疲れていないのに疲れた印象に見られ、社内で『大丈夫?』と声をかけられることがあります。その頻度が高いと、心配になってくるんですよえ。『僕ってそんなに不健康に見られてるの?』と(笑)」
資生堂の調査によると、「疲れていないのに疲れている印象に見られる(見られた)」と言われたことがある男性は、何と80%近くもいるのだそう。そして、お疲れ顔の主な原因は「肌のくすみ」なのだとか。
男性の肌悩みは他にもある。「『ヒゲ剃り跡を目立たなくさせたい』とか『クマやニキビ跡を消したい』など、女性と同じように悩みを抱えています。これらの肌悩みを手取り早く解決するには“隠す”、つまりファンデーションが一番なんです。でも、男性にはファンデーション=メイク、女性のもの、というイメージがあり、手に取るのをためらってしまう。だからこそ、男性用のアイテムを何とか作れないか、と考えたのが最初ですね」(堀さん)
ウーノのBBクリームの一番の特長は、テクスチャーと仕上がり感だ。
「最大のミッションは“使っているのがバレないこと”でした。『あの人メイクしてる』と思われないためにも、テクスチャーには細心の注意を払いました」と堀さん。「気になるところを適度にカバーしているにも関わらず、“塗ってる感”がない軽い仕上がり。この相反する機能を本当に実現できるのか、苦労しましたね」
さらにユニークな機能も搭載している。このBBクリーム、チューブから出した時は肌色ではなく白なのだ。
「白色のクリームが、肌にのせると肌色に変化するんです。実はこれ、塗りムラ防止になるんですよ。色が変わることで、こういったアイテムに不慣れな男性でも、しっかりと肌になじませるようになるんですよね。塗り方のお作法を身につけてもらうためにも一役買っているんですよ(笑)」
パッケージもスキンケアアイテムに見えるようなデザインを意識した。
「チューブタイプのファンデーションって珍しいんですよ。“スキンケアをしている感覚でカバーができる”というのは、男性にとってストレスが無い。ちょっとしたことなのですが、男性だからわかること、男性目線で欲しい要素を全て詰め込みました」
大ヒットのBBクリームは今年9月から販路を拡大して展開することが決まっている。
ブランドを統括する川畑さんは、「事実が伴えば、市場はさらに活性化していきます。コツコツとだけどウーノらしさが光るモノ・コトの提案をし続けていきたい」と締めくくる。ウーノの商品開発を担当する堀さんに男性の美容市場の今後の展望を聞いてみると、「可能性しかない」と手応えを掴んでいるようだ。ドラッグストアブランド「ウーノ」がどこまで日本のメンズ美容に食い込み、世界を牽引していくのか。今後の展開が楽しみだ。
【お話を伺った方々】
外資系メーカー勤務の後、「日本発の文化、日本人ならではの良さを世界に伝える仕事がしたくなって」と2015年資生堂入社。主に海外市場のマーケティングが得意。
「フェイスカラークリエイター」をプレゼント
今回ご紹介した資生堂ウーノのBBクリーム「フェイスカラークリエイター」を、FORZA STYLEの読者3名様にプレゼントいたします。男性はもちろん女性のご応募も大歓迎。お申し込みはこちらから。応募締め切りは2019年8月15日。なお、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
【問い合わせ】
資生堂お客様窓口 0120-81-4710
https://www.shiseido.co.jp/uno/
Text : Mayumi Hasegawa
Photo : Tatsuya Hamamura
Edit : Yukari Tachihara