ハンバーガーメニューボタン
FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
FOOD 日本独自のカレーを探れ

極上マグロ×南インド料理=濃厚カレーラーメン!?
吉祥寺の新鋭が仕掛ける超・新感覚カレー

無料会員をしていただくと、
記事をクリップできます

新規会員登録
現地完全再現の本格インドカレーからご当地カレーまで、百花繚乱な日本のカレー事情。そんななかから、いまも進化を続ける日本独自のカレーを「カレーライス」と定義し、個性溢れる「今食べるべきひと皿」とその作り手を、気鋭のカレーライター 橋本修さんが追いかけていきます。

今回は吉祥寺「築地スパイス食堂かぶと」

今回橋本さんが訪れたのは、都内屈指のカレー激戦区のひとつである吉祥寺で、昨年10月に産声を上げたばかりの「築地スパイス食堂かぶと」。店名に「築地」とあるように、“とある魚介”を大々的にフィーチャーした、立川のカレースタンド「RAINBOW SPICE」が手がける気鋭の新業態店です。
ここではいったい、どんなひと皿を味わうことができるのでしょうか。

縁から生まれたコンセプト


吉祥寺駅から徒歩4分ほどの好立地。明らかに船舶をイメージさせる外装は、ウェイティング用のブランコをはじめ、ほぼスタッフのDIYだというから驚き。

駅から徒歩1分という抜群のロケーションに加え、提供されるカレーもインド料理をベースにした確かなものというカレースタンドの最高峰、立川「RAINBOW SPICE」。そんな名店が新宿「RAINBOW SPICE DINER(現在は移転準備中)」、中野「Rainbow Spice Cafe Chai Stall」に続く”姉妹店”として昨年秋、吉祥寺にオープンさせたのが今回ご紹介する「築地スパイス食堂かぶと」です。

まず気になるのは、吉祥寺なのに築地という店名。その謎も含め、どのような経緯でこの新店舗が誕生したのか、店主の吉岡健さんに伺いました。

「2011年ごろから渡辺玲氏に師事していましたので、はじめから南インド料理や自家製マサラスパイスを主軸にしシーフードに力を入れた店を考えていました。そんな時ご縁があって、築地のマグロの仲買いで有名な『まぐろ藤田』さんから仕入れることができることになったんです。つまり店名になっている“かぶと”は、マグロの頭の事なんです。このかぶとには頬肉や顎、カマなど魅力的な部位がたくさんありますし、残った部分からはスープの出汁まで取れるんです。

また、移転前の築地魚市場場内にあったまぐろ藤田さんの店内に、無理を言って鍋とコンロを持ち込み、マグロのマサラカリーの仕上げをしたんです。店のみなさんやマグロを買いに来たお客様、料理人の方々やまわりの海産物を扱う店の方々に食べていただき、喜んでいただきました。つまり、現在店で出しているマグロのカリーは、築地魚河岸の真ん中で完成したもの。店名にある築地は、まさに原点なんです」

あたまづくしの目玉カレー


外装だけでなく、内装も「スケルトンにするところから自分たちではじめた」そう。カウンター席が10数席の明るい店内で、ランチはもちろん、仕事帰りの一杯にもおすすめです。

インド料理では、マグロという食材そのものはもちろん、出汁を使うことも一般的ではありません。なので、中心に据えた「マグロを使う」というコンセプト自体なかなかハードルが高いはずなのですが、カレーだけでなく、ラーメン、頬肉のステーキ、チャーハン(!)を含めた定食までが並ぶメニュー構成は圧巻です。そんななか、店名となっているかぶと=マグロの頭をあますことなく使用したフィッシュヘッド・カレーは、店の目玉メニューと言うべき逸品です。

「フィッシュヘッド・カレーは魚のあたまとココナッツミルクを合わせた、チェティナッド・スタイルのカレーです。かぶとではその魚のあたまにマグロを使っていて、そこに同じくマグロのあたまからとれる頬肉をマサラ(粉状の混合スパイス)でマリネして、鉄板で焼いたステーキと合わせる、まさに頭づくしのカレーです。またホールのスパイスをブレンドして、調理前に挽いたものを使っています。名前のインパクトも強いですが、それ以上にマグロの頭のうまみや、頬肉のステーキに使ったスパイスの香りが強烈なんです」

ディープな南インド料理も


ランチの一番人気、本日のダブルカリー(1,400円)。取材当日のカレーは鮪のガーリックバターマサラとポークビンダルーで、副菜としてミニサラダとレンコンのポリヤル、そして汁物(この日はラッサム)も付きます。

かぶとの名を体現するフィッシュヘッド・カレーやラーメン、定食など目新しい部分ばかり気になってしまいますが、かぶとのメニューには、ウプコリ・カリーという塩をベースにした南インドのカレーも並んでいます。日本ではまだマイナーな存在のウプコリですが、こういったすこしディープな南インド料理が同時に味わえることもかぶとの大きな魅力です。

「南インド料理を食べられるお店が増えているなかで、まだウプコリを出しているところがそれほど多くないということもあり、かぶとではメニューに加えてみたんです。このウプコリと、先ほどのフィッシュヘッド・カレーはどちらもインドのタミル・ナードゥ州が発祥の地なのですが、ここは少し前からシェフとして加わってくれたマハリンガムさんの出身地なんです。マハリンガムさんの地元のレシピを参考に、より現地の味に近づけて行こうと思っています」

スターシェフとの邂逅により、早くも店は次のステージへ


新たにマハリンガムさん(写真右)が加わり、店主・吉岡さん(写真中)、RAINBOW SPICE グランドマスター・関さん(写真左)も含めた3人体制に。

いくつかの日本の南インド料理店でメインシェフとして腕をふるい、インド料理マニアには広く知られた存在であるマハリンガムさんですが、自分のお店の準備をしている間、友人としてかぶとのシェフに加わったそう。こちらも吉岡さんの師匠である渡辺玲さんがつないでくれたご縁とのことで、この機会を活かすべく、カレーのブラッシュアップだけでなく、新メニューの開発も検討しているんだとか。

「“マグロを使った南インド料理”の可能性を探って日々研究、試行錯誤している状態です。いまはせっかくマハリンガムさんも厨房に立ってくれているので、もっと本場の南インドの料理や、そのルールや概念を教えてもらい、そういった部分も出していきたいという思いもあるんです。まだオープンから半年ちょっとなので、バランスをみながらおもしろい試みができればいいですね」


取材当日にマハリンガムさんが作ってくれた、開発中のメニュー。どれもスパイシーで、お酒との相性がとにかく抜群です。鮪頬肉のタワフライ(写真右上)、鮪尻肉のペッパードライ(写真右下)、鮪のポリヤル(写真左)。

インド料理的見地からの新感覚カレーラーメン


看板メニューのひとつであるマサララーメン(1,000円)。ラーメンというよりもまぜめん的なスープの濃度で、もちもちの麺によく絡みます。まずはそのまま食べて、次に別途供されるマグロのかぶと出汁をかけてラーメンとして、最後に追い飯(+100円)を投入しカレーライスとして平らげるのがオススメ。

お店のコンセプト自体がとても興味深いかぶとですが、ほぼDIYで完成させた内外装や個性的なメニューを取り揃えるための厨房も少し変わっています。なかでも、インド料理/カレー店ではまずお目にかかれない、ゆで麺機の存在感が際立ちます。

「ラーメンに関しては、あくまでカレーを作る側からの提案としてのラーメンなので、普通のカレーラーメンとは少し違うかもしれません。それと、複数あるカレーにあわせるものを米か麺かで選べるという、お客様の自由度も魅力だと思っています。それと同じく、カレーのうえに乗る粗挽きのマサラも、いまのところお出しするまえにこちらでかけているのですが、今後はガラムマサラや、チェティナードマサラなど3~4種類をテーブル調味料として、お客さまの好みで自由に使ってもらう形にしようと思っています」

今後の鍵を握る「鉄板メニュー」


タワ(鉄板)を使って頬肉を焼き上げる、調理中のマハリンガムさん。

ゆで麺機ともう1つ、厨房のなかで目を引くのがタワ(インドでタワは鉄板)の存在。このタワが、今後かぶとをより個性的な店にする鍵となるかもしれません。

「ラーメン用のゆで麺機だけでなく、うちの厨房にはタワもあるんです。そのタワをいかしたタワ・フライ(タワ・フライは鉄板焼き/鉄板炒め)を出しているんですが、その部分をもっと強くしたらおもしろいんじゃないかな、と考えています。海産物とタワの組み合わせで、お酒のアテになりそうなメニューを増やすことができれば、昼と夜、それぞれがちがったかぶとのスタイルを実現できると思うんです」


ゆで麺機から麺を上げる吉岡さん。他のカレー店ではまずお目にかかれない光景です。

素材との縁から生まれたコンセプト、師弟関係の縁から生まれたスーパーシェフとの邂逅。そんな縁を次々と味方にしながら、オープンから止まることなく歩き続ける築地スパイス食堂かぶと。遊び心と本格南インドの両方が堪能できる吉祥寺の新名店へ、ぜひ足を運ばれてはみては。

Photo:Takuya Murata
Text:Osamu Hashimoto
Edit:Yugo Shiokawa

今回訪れた店
築地スパイス食堂かぶと

住所:東京都武蔵野市吉祥寺南町2-4-3
営業時間:
11:30~15:00
18:00~22:00(料理L.O.21:00)
定休日:不定休
https://twitter.com/spice_kabuto
https://www.instagram.com/kabuto_2018/



RANKING

1
2
3
4
5
1
2
3
4
5