FOOD ― いま食べるべき“カレーライス”

【中目黒で20年】絶品マトンカレーをご賞味あれ!

2019.1.31 2019.1.31
2019.1.31

今回は中目黒「cafe REDBOOK(カフェ レッドブック)」

現地完全再現の本格インドカレーからご当地カレーまで、百花繚乱な日本のカレー事情。そんななかから、いまも進化を続ける日本独自のカレーを「カレーライス」と定義し、個性溢れる「今食べるべきひと皿」とその作り手を、気鋭のカレーライター 橋本修さんが追いかけていきます。

今回橋本さんが訪れたのは、都内屈指の人気エリア・中目黒において、いまや老舗の風格すら漂わせる「cafe REDBOOK(カフェ レッドブック)」。中目黒といえば、2015年の「FORRESTER」を皮切りに、「CURRY UP」や「VOVO」の新店舗もオープンするなど、なぜか原宿「GHEE」の流れを汲むカレー店が続々と集結するという、ちょっと変わったカレームーブメントが発生している街だったりもします。

そんな中目黒で、20年にわたり存在感を示しつづけるのが、今回ご紹介するcafe REDBOOK。飲食店が多数ひしめき合い、その代謝も激しい中目黒の地で熱烈に支持されるREDBOOKのカレーとは、いったいどんなものなのでしょうか?

名店のレシピを伝えるべくスタート

中目黒駅から徒歩3分ほど。山手通りと目黒川を超えた先にある、アンティークな味わいの外観が目印です。

中目黒駅からいまや花見のメッカとなった目黒川を越え、少しはずれた裏路地にある「cafe REDBOOK」は、オープンから今年でちょうど20年。もともとはオーナーである井上さんが和洋折衷、さまざまな料理を振る舞うカフェ・ダイナーとしてオープンしました。その後、中目黒銀座商店街にあったインドカレーの名店「オレンジツリー」のレシピを譲り受けた前シェフ、山崎さん(現「カフェオーケストラ」店主)が腕を振るうようになり、REDBOOKのランチにカレーが登場します。

「もともとここで働いていた山崎さんが、オレンジツリーを手伝っていたんです。それでオレンジツリーがお店を閉めることになったときに、そこで使っていた道具一式をレシピと共に譲り受けることになって、それを出してみようとなったのが、REDBOOKでカレーをはじめるきっかけだったみたいです。山崎さんがここを辞める何年か前に僕が入ったんですが、少しずつマイナーチェンジはしつつも、オレンジツリーのカレーは山崎さんを経由して、僕と、僕が教えた人なんかにも広がっているんです」

今回お話をうかがったのは、現在のシェフ、外川さん。その外川さんにREDBOOKを紹介した人もまた、オレンジツリーの常連さんだったそうです。

「ちょうど身体を壊したり、仕事をしたくなくてブラブラしていた時期に、見るに見かねた知人が『ここでカレー調理のバイト募集しているらしいよ』くらいの軽い感じで連れてきてくれたことが、REDBOOKで働くようになったきっかけですね。その人はオレンジツリーにもよく行っていたそうなんですが、オレンジツリーって、カレーの仕上がりに納得がいかないと最初から作り直すという店だったらしく、時間がかかることを承知の上で本を一冊持っていって、チャイを飲みながらのんびり待っていたそうです(笑)」

オリジナルレシピからの開放

グリーンの壁と赤い椅子のコントラストが印象的な店内。コンパクトながら、とても居心地の良い空間です。

今でこそREDBOOKといえばカレー、というイメージが定着しましたが、その過程には、元々のカフェダイナーとしての顔と、新たに加わったカレー屋としての顔を併せ持つ、二毛作状態の時期がありました。そこから、現在の昼夜ともにカレーを提供するスタイルへ、どのように変わっていったのでしょうか?

「山崎さんがここを辞めたあとに、彼のレシピをああでもないこうでもないとこねくり回していた時期があったんです。自分が調理をメインで担当するようになった最初のころは、お店にきてくれるお客さんに喜ばれないことが続いたりして、すごく自分自身にがっかりもして。それで、このまま元のレシピをコピーしているだけではダメだな、と思ったんです。

そういう経緯があるから、レシピだけでなくメニュー自体どんどん変えていこうっていうシフトチェンジができたし、そうするうちに喜んでもらえることも増えていったので、その感じをもっと伸ばしていきたかった。それと同時に、お店としても二毛作のような、どっちつかずの状態はやめたかったんですが、タイミング的にオーナーはどんどんケータリングが忙しくなっていた時期で、それだったら自分はお店をもっとカレーに特化させていこうと思って、昼も夜もカレーを提供するいまの形態になりました」

オリジナリティの秘訣は玉ねぎ

REDBOOKの看板メニューである、鶏もも肉がゴロッと入ったチキンカリー(1,000円 ランチはサラダ付き)を、オプションのサフランライス(ランチ時はプラス150円、それ以外はプラス250円)との組み合わせで。

REDBOOKで提供されるカレーは、その出自的にも、シェフ外川さんの指向的にも、インド料理がベースにしっかりと存在していますが、インドで使われるレシピとは大きく異なる部分があります。それは、しっかりとローストする玉ねぎ。インド料理でもコルマなど玉ねぎを大量に使用するものもありますが、極端に深くローストする料理はそれほど多くありません。

それに比べ、REDBOOKで提供されるカレーには、長時間ローストした大量の玉ねぎを用いるものが多く、それはカレーのボトムをしっかりさせるための基礎だといいます。

「僕らのカレーは化学(調味料)的なものは何一つ使っていないので、味に強いインパクトを出そうとすると、玉ねぎのローストは重要なんです。そして、味のインパクトを残しつつ、毎日食べても疲れないようにするには、というところで試行錯誤をしました。油の量を減らす引き算だったり、玉ねぎ以外の素材を変えてみたり、場合によってはさらに素材を足すこともあります。そんな経緯もあって今の玉ねぎの使用量は、当初のレシピに比べると2~3倍くらいになっていると思います」

やりたいことは、自分なりのやり方で消化

シェフの外川さん。20代前半からREDBOOKのキッチンに入り、すでにキャリアは10年以上。

外川さん体制になってからすでに10年以上の月日が経過した現在も、日々進化を続けているREDBOOKのカレー。お店のルーツやインド料理の伝統を感じさせながら、外川さんの個性もはっきり表現されたミックス感覚が最大の魅力ですが、このバランスにはどのように着地したのでしょうか?

「(南インド料理の定番メニューである)サンバルもラッサムも、自分自身好きなんですが、ターリーやミールスみたいなものって、すでに日本でやっている方がいらっしゃったので、僕のやることではないかな、と思ったんですね。やるなら、違ったアプローチがいい。それに、自分のなかで“カレーとライス”っていうものに重きを置きたかった。まずそこを伸ばした結果が今の状態なんです。

サフランライスやナッツライスなど、ライスの種類を増やしたのは、何人かで来てくれたお客さんがいろんなものをシェアできたほうがいいと思ったからというのもあるし、そのなかで新しい組み合わせを発見してもらえることに魅力を感じたからなんです。もちろん、店で今やっていることとは別に、憧れみたいなものはあるんですけどね。

例えば、中華料理屋の様なラインナップのインドレストランの料理がすごく好きなので、そういうものをやってみたいと思ったり、この前手伝わせてもらった須田君の「ダバ☆クニタチ」の料理やスタイルに憧れたりもするんですが、あんなにいろんなものを1人でやるのは、ちょっと自分には無理でしょうし(笑)。だったら、そういうもののニュアンスを、今までやってきたやり方にプラスしてやればいいかな、というのがいまの着地点ですかね」

なぜかたどり着いた“誰かの家のカレー”

最近ラインナップに加わった外川さん入魂の自信作、マトンカリー(1,450円)はライムをキュッと絞っていただきます。ライスに添えられた玉ねぎのアチャールも絶品。

オリジナリティ溢れるREDBOOKのカレーですが、インドやパキスタンから来日したお客さんから、外川さんは驚くべき言葉を耳にします。そしてそれは、思いもよらなかった自己肯定につながったんだそう。

「近年、海外の方がカレーを食べにきてくれることがすごく増えたんですが、そのなかにはインドの方もわりと多くて、ヒンドゥー教だけでなくシク教、イスラーム教の人とかもいるんです。そんななかで一番嬉しかったのは、最高の笑顔で言われた『お母さんの味に似ている!』という一言でした。家庭の味ってことですよね。でも、インドで家庭料理を食べたことなんてないし、今まで食べてきたものを考えても、そんな部分は微塵もないはずなんですよ。

もちろん、好きでやってきたし、自分なりに真面目に作っているつもりですけど、そのベースになっているものって、きっとインドの高級料理店なのか、定食屋のような味なのか、どちらかだと思っていたんです。でも、それをインドで食べる自分の家の味がすると言ってくれて。嬉しかったし、ショッキングだったんですよね。そうか、家庭の味か…って(笑)。でも、思ってもいないところで、これまで自分のやってきたことが間違っていなかったんだな、って認識できたんです」

ようやく納得のレベルに到達した新カレー

レギュラーメニューの他、店内の黒板にも特別メニューが。週末にはビリヤニも加わります。

REDBOOKでレギュラーとして提供しているカレーは、最近ラインナップに加わったマトンカレーや週末のビリヤニを含めると、全7種類。そのどれもが、きちんとキャラクターの立ったものですが、素材の旬などにより不定期でメニューが入れ替わっています。今後もメニューやスタイルの変化などはあるのでしょうか?

「いま出しているマトンのカレーは、これまでずっと躊躇してきたものだったんですが、ようやく納得のいくものを出すことができるようになって、ひとまずその達成感が大きいですね。僕のスタイルでカレーを作ると、主役じゃないと意味がないんです。どれをとっても主役になれるというか、どのタイミングでメニューを切り替えても主役になれるカレー。どのカレーも誰かにとってのベストにしたいし、そうじゃないとメニューに載せている意味がないと思うんです。

なので、あまり頻繁に新メニューが増える感じではないんですが、思い入れの強いマトンをいまのようなセミドライのタイプ以外で、例えばもっとシャバシャバのタイプでやってみたいとか、そういうことは考えていますね。

あとはインド的な部分は踏まえつつ、日本や他の四季のある国のように、季節に合わせるメニューとか、提案できるセットの内容もライスものだけでなく、副菜とでももっと楽しんでもらえるようにしたいみたいな、そういう構想はあります。料理の内容に多少変化があっても、ブレなければいいと思うんです。もう10年以上この厨房に立っているので、いまさら僕がブレるようなこともないんですけどね(笑)」


20年の歴史を感じさせる、雰囲気抜群の看板。

源流であるオレンジツリーから数えると、3代目ということになる外川さんですが、現在の厨房に10年以上立ち続けるなかで、自身のアイデンティティを揺るぎないものにしてきました。そして、既存のカレーをまた違った角度から楽しめる、ライスの選択や副菜の組み合わせなど、通いつめた常連にもうれしい多くのアイデアがまだまだ生まれています。

新たなカレー激戦区である中目黒において、唯一無二の存在感を発揮するREDBOOKで、自分にとってのベストなカレーを探してみてはいかがでしょうか。

Photo:Takuya Murata
Text:Osamu Hashimoto
Edit:Yugo Shiokawa

今回訪れた店
cafe REDBOOK(カフェ レッドブック)
住所:東京都目黒区上目黒1-3-2
電話:03-3710-3438
営業時間:11:30~23:00(ランチタイム 11:30~14:30)
定休日:日曜、祝日
http://www.caferedbook.com/

Author profile

橋本 修
橋本 修
Hashimoto Osamu

スパイスディーラーとしてストリートで名を馳せ、2017年からはカレーに特化した食ライターとしての活動を開始。ライムスター宇多丸氏がパーソナリティを務めるTBSラジオの人気番組「アフター6ジャンクション」のカレー特集にも出演し、電波の上でも日本のカレー事情をスムースにオペレートした。DJ、音楽ライターとしても活躍中。(イラスト:@animamundi_)

KEYWORDS
カレー

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