FOOD ― いま食べるべき“カレーライス”

味とビジュアルが完璧に調和! 目黒の新名店が提案する、今すぐ食すべき新感覚カレー

2019.2.28 2019.2.28
2019.2.28
現地完全再現の本格インドカレーからご当地カレーまで、百花繚乱な日本のカレー事情。そんななかから、いまも進化を続ける日本独自のカレーを「カレーライス」と定義し、個性溢れる「今食べるべきひと皿」とその作り手を、気鋭のカレーライター 橋本修さんが追いかけていきます。

今回は目黒「LAND(ランド)」

現地完全再現の本格インドカレーからご当地カレーまで、百花繚乱な日本のカレー事情。そんななかから、いまも進化を続ける日本独自のカレーを「カレーライス」と定義し、個性溢れる「今食べるべきひと皿」とその作り手を、気鋭のカレーライター 橋本修さんが追いかけていきます。

今回橋本さんが訪れたのは、目黒駅から権之助坂をくだった先に位置する「LAND(ランド)」。目黒通りに面したアーチをくぐり、螺旋階段をあがっていくという、昔ながらのカフェやレストランを彷彿とさせる印象的なアプローチには、入店を待ちわびる人が連日列を作っています。

路面店でないにも関わらず、3年ほど前の開店からまもなく屈指の人気店となったLAND。味も見た目もインパクト抜群で、中毒者が続出しているLANDのカレーは一体どのように生まれたのでしょうか。ヒゲがトレードマークの店主、内藤さんに迫ります。

「わかりやすさ」とは距離を置く店構え

JR目黒駅から徒歩8分ほど。権之助坂をくだりきるぐらいの場所で、この螺旋階段を登った2階がお店の入口です。

オーセンティックなアーチに螺旋階段。「意思表明みたいなものも気恥ずかしいですし、明確な意味をもつような名前にしたくなかった」という店名を表すかのごとく、貼り出されたメニューを見ない限り、一見何の店なのかわからないLANDの外観は、決して派手ではないものの、とにかく印象に残ります。

「一番大きなコンセプトとして、調和やバランスみたいなものがあります。それはもちろんカレーも含めて、全てのバランスです。食事をするということは、そこで食べるものだけではなく、場所や環境、流れる音楽などいろいろな要素が関わってくると思うので、それらすべての調和を大事にした店にしたいというのがありました」

楽しくストイックに自身のカレーを追求

席数は15席ほどながら、目黒通りを見渡す一面の窓で、開放的な店内。ナチュラルな雰囲気とインダストリアルな質感がマッチした、居心地の良い空間です。

打ちっぱなしの壁や床、通りに面した一面の窓からの景観、カウンターからダイレクトに眺められる厨房と、その中に並んだ調度品。そのすべてから、LANDをはじめるまではデザイン関係の仕事をしていたという内藤さんの美意識を感じられます。

そして、それはもちろん提供されるカレーも同じ。切り立った山のようなライスがとくに目を引く、美しく盛られたカレーはビジュアルだけではなく、ローストされた玉ねぎの旨味と、少し独特なスパイス&ハーブ使いが目新しい、唯一無二のものです。

「20代の頃から食べ歩きはしていたんですが、それは食べ物全般という感じで、特にカレー中心というわけではなかったです。むしろその頃は、フレンチやイタリアンなど西洋料理が多くて、カレーは少なかったくらいでした。だから、カレー作りをはじめるきっかけになったお店や、ベースになったカレーがあるというわけではないんです。

スパイスからカレーを作りはじめたのはもう20年以上前で、当初から上野界隈のスパイス問屋でスパイスを買って作るみたいなことはしていました。もともと凝り性ですが、素人が趣味に没頭すると時間もお金も制限がないし、 固定観念も無いので、本当に自由に楽しくストイックに作れていました。 そういう素人のアマチュア力というか、純粋な強いエネルギーみたいなものって、プロの人を超える事もあると思うんですよね」

DIY魂をくすぐる「スパイスというパーツ」

LANDを代表するメニューのひとつが、このポークカレー(1,200円)。印象的なライスの奥にはマッシュポテトも添えられ、食べごたえも抜群です。

ことさらインド料理に対する興味が強かったわけではないという内藤さんですが、それはLANDをオープンし、繁盛店となったいまでも変わることはないそう。一体何故、スパイスからカレーを作ることがまだ一般的ではなかった時代から、趣味としてカレーを作りはじめたのでしょう?

「普通にインド料理屋さんのランチでナンとカレーのセットを食べることはあっても、ディナーのアラカルトやコースを食べにいったことはほとんどないし、意識的に食べたようなことはないです。料理は昔から和洋中、それぞれこだわって作っていましたが、 一番楽しかったのがカレーでした。スパイスというパーツを組み合わせて、ひとつの作品を作るというのが自分に合っていたのかな。DIYが昔から好きで、この店だと看板やメニューケースを作りましたが、 カレー作りもその延長線上にあります」

食後感を変えないために、変えていかないといけないこと

女性人気ナンバーワンの、季節野菜とドライフルーツのカレー(1,300円)。いちじくなど、たっぷり乗せられたドライフルーツは見た目だけでなく、味に深みと変化を出す役割も。

スパイスの可能性に魅せられ、数ある選択肢からカレーを選んだという内藤さんですが、お店をオープンしてからは、趣味として作っていた頃とはまったく性質の違った試行錯誤もされていると言います。それはやはり、商いとして、プロとしてカレーを出すこと、また、お店を続けていく上で必要不可欠な部分だそう。

「社会も人も常に進化していると思いますし、同じものを同じようにやっていたら、世の中から遅れたものになると思うんです。 だから同じものでも常に改良を重ねていかないといけないと考えています。カレーのレシピも同様で、常にアップデートをしていますが、食べたときの感覚っていうのはあまり変わらないと思います。もちろん、その変化に気づく人も、そうでない人もいると思いますが、食べたあとに『ああ、よかったな』と思ってもらえる感覚は変わらないはずです。でも、それを変わらないようにするためには、やっぱり変えていかなくてはならないんです」

美しさと効率の両立から生まれたピラミッドライス

立派なヒゲがトレードマークの店主、内藤さん。声までダンディです。

そういった意識は、先程も触れたライスにもよくあらわれています。あのピラミッドのようなライスは、ビジュアルと提供のスピード、そして一番重要な美味しさまでを考えた結果なんだそう。これも、LANDのコンセプトである調和やバランスが際立つポイントです。

「ライスの盛り付けは、とくに意識してああなったわけではないんですが、やっぱり盛り付けも大事な要素です。ご飯をどうやって盛り付けようかな、と考えているなかで、まず絶対に美しくなくてはダメだというのがあって。

そしてもうひとつは、早くできないとダメだということ。でも、ただ山盛りにするだけでは芸がないということで、試行錯誤していたら自然にああいうピラミッドのような形になっていて。それも、言われてはじめて気づいたくらいだったんです(笑)。自分としては、とにかく美しく早くできること。それを突き詰めていった結果です。

もうひとつ、ご飯はガスコンロと鍋で炊いているんですが、それは味へのこだわりでもあり、実際の作業効率を考えてのことでもあります。炊きあがるのが早いし、小回りが効くんですね。いくつもの鍋でタイミングをずらして炊くことで、炊きたてのご飯を食べてもらうことができますから」

マッシュポテトは日本式カレーへのオマージュ

LANDのライスを山に見立てた、オリジナルのトートバッグ。カレーが呼んでいます。

そんなライスと同じぐらいLANDのカレーを象徴するのが、マッシュポテト。すべてのカレーのライス脇に添えられたマッシュポテトは、プレートの無国籍感をより一層加速させていますが、これも唯一無二なLANDのカレーに、なくてはならないものです。

「若いころにフランスに行くことが多かったんですね。ひと月くらい部屋を借りて、滞在している間はいろんなところを食べ歩くことも目的のひとつだったんですが、気に入ったビストロの一皿にはだいたいマッシュポテトが添えられていて。LANDをはじめるときに考えていたのが『日本人の作るカレーを出そう』ということだったんですけど、それは和をモチーフにしたカレーとかではなく、日本人だからこそできるカレー、というものにしたかったんですね。

やっぱり日本人って、いろんなところからいいものをもってきて、それを融合していくことが得意だと思うので、自分でそれをやるとしたらどうするか、ということを考えて。日本のカレーライスは、にんじん、じゃがいも、玉ねぎと、野菜がゴロゴロ入ったものが一般的じゃないですか。そのニュアンスをなんとなくわかるぐらいの感じで出したくて、じゃあそのよく使われる野菜のなかから何を使うか、って考えた結果がマッシュポテトだったんです」

7種のカレー、それぞれの役割

カレーは全7種類。トッピングも充実しています。テイクアウトも可です。

比較的ベーシックなチキンやポーク以外に、少し変わったところだとエビとアボカドや、ひよこ豆とカシューナッツのカレーなど、LANDでは現在、7種類のカレーを食べることができます。さらに、炙ったシュレッドチーズやグリーンチリのペーストなどのトッピングを含めると、オーダーの選択肢はかなりの数になります。どのようにして、このようなメニューになったのでしょうか?

「最初はチキンカレーとポークカレー、あとはコーヒーだけだったんです。メニューを増やしていったのは意識的なもので、それはやっぱり来てくれるお客さんにとって、ある程度選択肢があったほうが嬉しいかな、と思ったからですね。

あと、自分のなかではそれぞれのカレーに役割があって、チキンとポークはもちろん肉の味や食感も違いますけど、一番はスパイスの違いですね。野菜のカレーは見た目の美しさを際立たせたメニュー。ひよこ豆とナッツは、肉を食べない方に向けたメニューで、実際にお店にこられる海外の方は、8割方これを注文されるんです。


カレーの種類をまだ増やしたいというか、やってみたいものはあるんですが、仕込みなども考えると今のもので手一杯で、そうすると何かいまあるものを減らすことになる。でも、いま来てくれるお客さんのことを考えると、『この人はこれがないと困るかな』となってしまい、なかなか減らせないんです。さっき言ったような役割分担もあるし、いまのラインナップはすぐには変えられないと思います」

調和をとる為には、一歩引いたところから見るのが大事

目黒通りからは、このアーチが目印。

LANDは月、火、水の平日3日を定休日にしています。様々な営業形態の飲食店が増えているものの、やはり週3日の休みというのは異色と言えるでしょう。しかしこれは、常にベストな状態でお客さんを迎え入れたいという、内藤さんの思いによるものでした。

「お店を開ける4日のために3日休む。4日のためにっていうと少し違うかもしれないですけど、その4日間はやっぱりずっと集中して、最高のものを提供したいんです。だから、3日の休みは仕込みもあるし、研究っていうと大げさですけど、レシピの見直しをすることもある。もちろん身体を休めることもあって、その全てが残りの4日間につながっていると思っています」


店先には、こんな雰囲気抜群の看板も出ています。

“調和”をコンセプトとし、螺旋階段をのぼって店に入り、カレーを食べ、食後のコーヒーを楽しみ、そして店を出る瞬間まで、素晴らしく調和のとれた時間を提供してくれるLAND。それは内藤さんが、すべての要素のバランスを突き詰めた結果に他なりません。

「仕事にプライドを持ってやっていますし、美味しいものを提供したいという思いも強いです。ただ、あまり前のめりにならない様に、意識的に気をつけています。 調和をとる為には、一歩引いたところから見るのが大事ですから」

そんな内藤さん自身の絶妙なバランス感覚が生み出す、究極のカスタマーファーストなカレーを目黒で味わってみてはいかがでしょうか。

Photo:Ikue Takizawa
Text:Osamu Hashimoto
Edit:Yugo Shiokawa

今回訪れた店
LAND(ランド)
住所:東京都目黒区下目黒2-21-28 セントヒルズ目黒 2F
電話:070-5518-7621
営業時間:
[木・金]12:00~15:30(L.O.15:00)
[土・日]12:00~18:00(L.O.18:00)
※売り切れ次第終了
定休日:月曜日、火曜日、水曜日
http://land.hn/

Author profile

橋本 修
橋本 修
Hashimoto Osamu

スパイスディーラーとしてストリートで名を馳せ、2017年からはカレーに特化した食ライターとしての活動を開始。ライムスター宇多丸氏がパーソナリティを務めるTBSラジオの人気番組「アフター6ジャンクション」のカレー特集にも出演し、電波の上でも日本のカレー事情をスムースにオペレートした。DJ、音楽ライターとしても活躍中。(イラスト:@animamundi_)

KEYWORDS
カレー

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