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FOOD 日本独自のカレーを探れ

六本木から新宿に引き継がれた 老舗の辛さを堪能すべし!

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現地完全再現の本格インドカレーからご当地カレーまで、百花繚乱な日本のカレー事情。そんななかから、いまも進化を続ける日本独自のカレーを「カレーライス」と定義し、個性溢れる「今食べるべきひと皿」とその作り手を、気鋭のカレーライター 橋本修さんが追いかけていきます。

今回は新宿「FISH(フィッシュ)」

現地完全再現の本格インドカレーからご当地カレーまで、百花繚乱な日本のカレー事情。そんななかから、いまも進化を続ける日本独自のカレーを「カレーライス」と定義し、個性溢れる「今食べるべきひと皿」とその作り手を、気鋭のカレーライター 橋本修さんが追いかけていきます。

今回橋本さんが訪れたのは、新宿駅から小滝橋通りを北上した先に位置する「FISH(フィッシュ)」。六本木で30年もの長きに渡って親しまれた名店の屋号と味を引き継ぐ形で昨年オープンした、注目店です。

一度は完全に絶たれるはずだったFISHの歴史が、どのようにして再び動き出したのか。老舗の味の現在進行形に迫ります。

「移転」というより「継承」


小滝橋通りを大久保方面に向かうこと数分。通り沿いの雑居ビルの2階に新生FISHはあります。

六本木一丁目駅の眼前にそびえ立つオフィスビル「アーク森ビル」。その3階で30年の長きにわたり、“インドカレー風カレーライス”のはしりとして、同ビル内や近隣で働くサラリーマンから愛されてきたのが「FISH」です。

しかし一昨年2017年の6月、惜しまれながらも閉店。FISHの歴史に、一旦終止符が打たれました。

それからちょうど一年が経った昨年6月。同じFISHの屋号を冠した店が、新宿の小滝橋通りに誕生します。この新生FISHは、六本木時代のオーナーである田中さんから、立川や福生を中心にタイ料理店や和食店などを複数手がける「たるたるジャパン」のオーナー、齊藤さんがバトンを受けつぐ形でスタート。

場所だけでなく、エメラルドグリーンの壁に幾何学模様のタイルが敷き詰められた、これぞインドという内装からも、シンプルかつモダンなカレースタンドという趣だった六本木時代から、大きな変化を感じさせます。


現地のストリートフード・ショップ、といった趣の内装。グリーンの壁が目を引きます。席数は26席。

「もともと現オーナーの齊藤が、六本木のお店によくカレーを食べにいっていたことがきっかけです。ビルの改装に伴い閉店するという話は、事前に聞いていたみたいですね」

そう話してくれるのは同店のマネージャー、大木さん。本来、六本木の閉店とともにFISHは完全に終了で、移転や引き継ぎということは検討されていなかったそう。しかし、その味を引き継ぎたいと多くの候補者が名乗りを上げ、その座を現オーナーが射止めました。

「元のオーナーさんも、六本木のお店を閉めることを決めた時点では、移転や引き継ぎのことは一切考えていなかったようですが、齊藤の思いが強く、根気よくお酒の席などで話をするうちに、お互いの思いがつながったみたいなんです。それで、六本木で腕を奮っていたディパックさんを、オリジナルレシピとともにメインシェフとして迎え、新たに店をスタートすることになりました」

味は守りつつ、さらなる満足感を追求


看板メニューであるキーマカレーと、ミルキーながらしっかりスパイシーな白身魚のカレーを盛り合わせた「2種コンボ(1,300円 アイスクリーム付き)」。

現在のFISHのカレーは、アチャールやパパドなどの副菜が添えられた、フォトジェニックなワンプレート。カレーとライスだけがシンプルに盛られた六本木時代とは、まったく別のカレーのようです。近年のトレンドを踏まえたようにも見えますが、あくまでFISHのカレーをもっと楽しんでもらうために生まれたもの。そしてもちろん、そこに盛られたカレーは、正真正銘FISHのカレーです。

ちなみに店名は「Fitness」「India」「Splendid」「Hottest」の頭文字を取ったもので、魚のカレーとは関係無いそう。

「カレーのレシピには一切手を加えていませんし、食材やスパイスも同じものを同じところから仕入れています。大幅に変えたのは、やはり盛り付けですね。それは今回引き継ぐにあたって、齊藤が当初から考えていた部分でした。

もともとの盛り付けはいわゆる“ザ・カレーライス”とも言える、昔ながらのカレーライスといった感じの盛り付けでしたが、それを一新して、パパドや副菜なんかの付け合わせを増やして、全部ワンプレートに盛り込む形にしています。『本当にこの付け合せで喜んでもらえているのか?』『このカレーにこの付け合せは本当に合っているのか?』ということは今もずっと話し合っていて、実際、付け合わせや盛り付けは、現在進行系で少しずつ変化しているんです。

もともとランチにはサービスでスープをつけていたのですが、こっちの方がもっと喜ばれるんじゃないか、という案が出て、いまはスープではなく、食後にアイスクリームをお出ししています」

本場のストリートフードを楽しめる夜メニュー


新生FISHの大きな特徴である夜メニュー。見ているだけで飲酒欲が高まります。

根幹となるレシピや食材は忠実に受け継ぎつつ、その他の部分で現代的なアレンジを加えた結果、往年のファンも納得、新たにFISHを知った層も大満足の、ハイブリッドなひと皿が生まれたわけですが、じつは新生FISHにはもうひとつ、大きくアップデートされた部分があります。

それは、夜メニューの誕生。六本木時代のFISHは通し営業で、基本的には終日同じメニューを提供していましたが、現在は夜営業用の“アテ”になりそうなメニューが新たに加えられています。お店の看板に“INDIAN STREET FOOD & SPICE CURRY”とあるように、インドでは露天などで楽しまれるストリートフードが中心のラインナップで、こちらもディパックさん自慢のレシピを元に構成されています。

「夜にはお酒の飲めるような店に、というイメージは当初からありました。六本木の店舗は完全にオフィスビルでランチが中心だったんですが、今回はそういうロケーションではないので、昼と夜で異なるメニューにしたんです。お酒のアテになるようなメニューを、というのもありますし、なにより、せっかくディパックさんが厨房に立ってくれるのなら、カレーだけではなくて、インドのストリートフードみたいなものも教えてほしかったんです。

あと、お酒の飲めるインド料理屋さんは少しずつ増えているけど、まだそれほど多いわけではないので、そこでストリートフードを出したらおもしろいんじゃないかな、ということもオーナーは考えていたみたいです」

カレーの新ラインナップを支える豆カレー


こちらは昼メニュー。キーマカレーかMIX豆カレーともう一種類のカレーを選べる「2種コンボ」に加え、キーマ+MIX豆+もう一種類という、豪華な「3種コンボ」も用意されています。

新生FISHでは、カレーのラインナップもバージョンアップされています。もともとの人気メニューであるキーマ、チキン、白身魚のカレーに加え、同じくディパックさんのレシピであるMIX豆のカレーとポークカレーが定番メニュー入りしました。

なかでもMIX豆のカレーは、複数のカレーを組み合わせることができる「コンボ」の中心を、六本木時代から代名詞的存在として君臨してきたキーマカレーとともに担っています。

「カレーの種類を増やしたのは、店としての新たな提案というよりは、選択肢が増えた方がお客さんに喜んでもらえるよね、という理由ではじめた部分が大きいです。コンボのひとつとしてMIX豆のカレーを置いたのは、豆のカレーって女性や、インド料理を食べ慣れた方に好まれるんです。

でも、カレーライスを食べたい男性からは少し敬遠されがちなイメージがあって、そういうお客さんにもFISHの豆のカレーをきっかけに、インド料理や豆のカレーを知ってもらえたらいいな、という狙いはありました。実はディパックさんのレシピにはカレーがまだいくつかあって、そのどれもが定番化できるくらい美味しいので、そのうちメニューが増えたり、変わったりするかもしれません」

シェフの帰国にも一切動じない店作り


ランチのもうひとつのお楽しみが、週替りカレー。このホタテカレーをはじめ、ポークビンダルー、欧風カレー、グリーンカレーなど、毎週自由で魅力的なラインナップです。

六本木時代よりFISHに深く関わってきたディパックさんですが、現在の店が落ち着いてきたころ、インドへ帰国されました。今後は大木さんを中心に、現在のレシピを守りつつ、さらに進化させていくことになりそうです。週替りのカレーなど、すでに新たな試みもスタートさせていますが、大木さんは、いまは新しいことをはじめるタイミングではないと言います。

「いま一番やらなくてはいけないことは、新しいことにいろいろ手を出すよりも、いまあるもののオペレーションを、もっとよくできるように突き詰めていくことだと思っています。そういう時期ですね。

認知度もまだ充分だとは思っていないんですが、ありがたいことにメディアに取り上げてもらうことも多いので、それを見て来てくれる大勢の新しいお客さんを迎えるのに、バタバタしてしまわないようにしないといけないですから」

ただ引き継ぐだけではなく、もっと強力なブランドに成長させたい


今回話を伺ったマネージャーの大木時哉さん。笑顔が素敵なナイスガイです。

昨年のオープンからSNSや各種媒体を賑わせてきた新生FISHですが、大木さんはまだまだ大きな展開を考えているそうです。そこには30年以上続いたFISHの味、そしてそのブランドを、より多くの人々に届けたいという明確な意思がありました。

「FISHっていうお店が持つブランド力は、僕らが引き継いだ段階で相当に強いものでした。でも、そこに慢心しないで、さらに価値を上げていきたいと思っているんです。よりたくさんの人に知って欲しいし、食べて欲しい。そのためには、自分がFISHに携わっているあいだに、フランチャイズをやりたいっていう人が現れるくらいまで、FISHをブランドとして確立させたいですね。そうすることで、新しい場所や世代にFISHが広がっていくことになると思うんです」


入口横にはFISHの歴史を感じさせる、旧オーナーとディパックさん、そして六本木FISHのシェフの3ショットが。

30年以上続く看板を背負うことに不安はなかったのか、という問いに対する「不安はなくて、むしろ30年人々に愛された味を引き継げる光栄さしかありませんでした」という大木さんの言葉がとても印象的でした。歴史を守りながら、新たな魅力にも溢れる新生FISHに、是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

Photo:Takuya Murata
Text:Osamu Hashimoto
Edit:Yugo Shiokawa

今回訪れた店
FISH(フィッシュ)

住所:東京都新宿区西新宿7-5-6 新宿ダイカンプラザ756 2F
電話:03-5937-6322
営業時間:11:30~15:00、17:00~23:00(L.O 22:00)
定休日:月曜日(月曜日が祝日の場合は営業、翌火曜日が休み)
https://www.facebook.com/fish.indian.curry/
https://www.instagram.com/fish.spice.food/



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