ジェイアール東日本企画のアンケートによると、35歳から69歳の男性のうち、約83%が「センスのいい服を着たい」と考えているのだという。
「主人はもともと独特なファッションセンスというか、正直一緒に歩くのが恥ずかしいほど、私と服装の傾向が違う人なんです」
こう話すのは、岡本留美子さん(仮名)。留美子さんが夫のファッションをイジり、夫がそれに明るく返すのが日課だった。
しかし、ある日3人の娘から「お父さん、やば。ダサっ」と言われてしまった留美子さんの夫の様子はいつもの様子とは違ったのだ。
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「いつもなら、『なんだと~!』と夫が笑いながら娘たちを追いかけ、追われた子供たちが『きゃーー』と言いながら逃げまどってみんな笑うという場面なんですね。でも、その朝の夫は全然違って。突然、ものすごく悲しそうな顔をしたんです」
笑いで湧いていたその場は、夫の表情によって一気に静まり返った。
「みんなしてそんなに笑うことねえだろ、と夫が小さい声で言ったんです。お父さんなんかと買い物行っても、ダサい親父だなと思われるだけだから一緒になんか行くな、やめろやめろ。お前たちだけで行ってこい、と言い出したんです」
娘たちはお互いに顔を見合わせながら、戸惑いを隠せない様子だったという。留美子さんはこの時、すぐに夫に謝れば良かったと今でも後悔している。
「素直にごめんねと言えば済むことだったのに、むしろ私は腹を立てていました。これまで15年もこのやりとりをやってきて、そんな冗談がうちの日常的な夫婦漫才の型というか、場を和ませるための一つの方法だとさえ思っていたんです。何で突然そんな風になっちゃうの?と」
夫の言葉を真に受けて留美子さんと子供たちだけで出かけるわけにも行かず、その日の計画は台無しになってしまった。子供たちも訳が分からないのと買い物に行けなかった不満で、ひどく機嫌を損ねていたそうだ。