2022年に離婚した夫婦のうち、同居期間が20年以上だったいわゆる「熟年離婚」の割合が統計史上、過去最高になった。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「時代の変化と言えるでしょうね。1950年代の男性の寿命は58歳。それが今は81歳と言うことですから、老後の時間が長くなったことは確実です。不一致が顕著化しやすいことにも頷けます。また昭和の時代は、夫1人の鍵で暮らしていけましたが、物価が上がり続ける今はそうもいきません。その結果、経済的に自立した働く女性が増えています。夫に金銭的に頼ることがないことも一因かもしれません」。
子供の成人がひとつのゴールになるケースも多い。
「子どもを育て上げて一度、人生をリセットするそんな感覚もあるのかもしれません。以前は定年を機にした離婚が多かったようですが、最近では役職定年で収入がぐっと下がるタイミングで離婚する人も増えているそう。いずれにしろ、熟年離婚は他人事ではありませんね」。
今回はそんな熟年離婚を実際にしたばかりだという女性に話を聞いた。
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滝 典子さん(仮名・54歳)は、昨年春に熟年離婚をした。
「子どもが成人したことが、大きな後押しになりました。いや、子どもが成人して家から出るのを数年前から楽しみにしていたと言ってもいいかもしれません」。
典子さんは、数年前から離婚の決意を固めていたと話す。
「人生100年時代と考えるとまだ半分。80年だとしてもまだ先は長いですよね。この時間を元夫と一緒に過ごすことが考えられなかったんです。もう一度、人生を始めたい、今はそんな気持ちです」。
典子さんは、これまでの人生を家族と子供に費やしてきた。
「子どもは息子が2人。幼い時から、完全にワンオペでした。今でこそ、父親が当たり前に育児をする世の中ですが、ほんの20年前はまるで違った世界。幼稚園に送りに来ているのは、90%が母親でしたから」。
出産を機に仕事を辞めたタイプだ。
「当時勤めていた会社は、残業も多くて、とてもじゃないけど、身重で全力投球できるとは思えなかったんです。それに当時は育休に対する風当たりも強くて…。しばらくは、子どもを育ててもいいかな?と思っていたので、そのままやめて専業主婦になりました」。
夫の望みでもあったらしい。
「夫は田舎の生まれ。自身も専業主婦の母に育てられていたことから、私の選択に大賛成と言った様子でした。今思えば、都合がよかったんでしょうね。当時はまだ家事の分担なんて言葉はあまりなくて、家事育児は私がすべてを担うことになりました」。
しかし、育児は思いのほか大変だったそう。
「年子の男の子だったこともあり、結構大変でした。夜もよく眠れないし、お風呂なんて数年間はゆっくり入れたためしがありませんでした。あまりの辛さに何度か夫に応援を頼みましたが、そのときはやるやる!と言うんですけど、すぐ忘れてやらなくなる。その繰り返しでした」。
唯一の仕事、ゴミ捨てすら3日坊主だったと話す。