「犬が嫌い」と言いにくい世の中の矛盾
狂犬病の予防接種率の低下が問題となっている。犬の飼い主には、飼い犬に対して年1回義務づけられている狂犬病の予防接種だが、2022年度は、全国的な蔓延をまねくリスクのある「危険水域」に迫るほど、低い接種率だった。
群馬県伊勢崎市では今年2月、犬に児童ら12名が噛みつかれた事件が発生した。この犬が狂犬病の予防接種をしていなかったことが明らかになったことは記憶に新しい。狂犬病が発生したら、人の致死率はほぼ100%である。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「狂犬病の予防接種は犬の飼い主に義務付けられています。残念ながら法律で定められていることを遵守できていない人に犬を飼う権利はない、そう思います」。
飼っている人から見れば可愛い家族でも、犬が苦手な人もいる。今回はそんな相反する関係に困り果てている女性に話を聞くことができた。
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和田マリさん(仮名・58歳)は、犬をはじめ、動物全般が苦手だと話す。
「幼い頃は、野良犬がまだいた時代。噛まれたことはありませんが、何度か追いかけられたことがあってそれ以来、犬は大嫌い。猫やうさぎなんかもまるで可愛いとは思えません。毛がなんか嫌で。1人で暮らすだけでも大変なのに、ペットを養うなんて無理難題ですしね」。
マリさんは、独身で今もマンションで一人暮らしをしているそうだ。
「築20年くらいのアパート。家賃は7.5万円くらい。今は契約社員ですが、今後のことを考えるとちょっと不安もありますね。いつ契約を切られてしまうかわかりませんし、もう年齢も年齢ですし…」。
そんな苦しい生活を送るマリさんだったが、最近引っ越しを考え始めたそう。
「実は住んでいたアパートが突然、ペット可になったんです。驚愕でした…」。
マリさんが犬の存在に気がついたのは廊下でのことだった。