「犬が嫌い」と言いにくい世の中の矛盾
群馬県伊勢崎市で2月7日に発生した、犬に児童ら12名が噛みつかれた事件。その後、なんとこの犬が狂犬病の予防接種をしていなかったことが明らかになった。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「狂犬病の予防接種は犬の飼い主に義務付けられています。伊勢崎市によるとこの犬に予防接種をした記録がないというのです。狂犬病は効果的な治療がないことで知られ、ほぼすべての人が死に至る恐ろしい病気です。残念ながら法律で定められていることを遵守できていない人に犬を飼う権利はない、そう思います」。
噛まれてしまった児童をはじめとする12名が心配だ。
「噛んだ犬は体長130cmの四国犬。実は被害にあったのは、人間だけではないこともわかりました。トイプードルが噛み殺されていたんです。犬は飼い主に対しては非常に従順ですが、それ以外は敵視する可能性も大いにありえます。逃げ出してしまったようですし、不安もあったのかもしれません。今回の事件は、犬のせいというよりは、飼い主の飼育に問題があると言わざるをえないでしょうね」。
飼い主である会社役員は、事件を起こした犬以外にも6頭の四国犬を飼っているそうだ。飼っている人から見れば可愛い家族でも、犬が苦手な人もいる。今回はそんな相反する関係に困り果てている女性に話を聞くことができた。
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和田マリさん(仮名・58歳)は、犬をはじめ、動物全般が苦手だと話す。
「幼い頃は、野良犬がまだいた時代。噛まれたことはありませんが、何度か追いかけられたことがあってそれ以来、犬は大嫌い。猫やうさぎなんかもまるで可愛いとは思えません。毛がなんか嫌で。1人で暮らすだけでも大変なのに、ペットを養うなんて無理難題ですしね」。
マリさんは、独身で今もマンションで一人暮らしをしているそうだ。
「築20年くらいのアパート。家賃は7.5万円くらい。今は契約社員ですが、今後のことを考えるとちょっと不安もありますね。いつ契約を切られてしまうかわかりませんし、もう年齢も年齢ですし…」。
そんな苦しい生活を送るマリさんだったが、最近引っ越しを考え始めたそう。
「実は住んでいたアパートが突然、ペット可になったんです。驚愕でした…」。
マリさんが犬の存在に気がついたのは廊下でのことだった。