「労働基準法に遅刻に対する明確な定義はありません。もちろん決められた労働開始時間を過ぎていれば遅刻とみなされますが、タイムカードなどがないお店もあり、その辺りは会社ごとの判断になります。遅刻について規範に詳しく明記されている会社もあるかとは思いますが、そこまで詳しく書かれている会社は少ないかもしれませんね。ただし、規定の制服への着替えなど、会社の使用者の指揮命令下に置かれている時間については、労働時間に含まれます。日本では始業時間には仕事をスタートできる状態にしておくことが基本と思われているようですが、着替える前から労働時間とカウントされるのです。ここは勘違いしている人も多いので注意が必要です」。
畠山さんは入社当初から、入り時間ぴったりにタイムカードを切っていたという。
「それまでパートメンバーはだいたい10分くらい前に来て、着替えてからタイムカードを切っていました。夕方のレジを担当しているのは学生さんも多く、学校帰りにそのまま来て、休憩室で勉強したり、休んだりしてから働き始める人もいます。そういう経緯もあり、着替えてからタイムカードを切っていたんです」。
のんびり支度をしている畠山さんに対して「遅刻ではないか」という声が上がったことから、美智子さんは畠山さんに「遅刻に当たりますよ」と注意をした。すると畠山さんはこう言い返してきたんだという。
ー前の会社ではこうでしたよ?それに労働基準法では着替えも労働時間に含まれるんですよ。知らないんですか?バイトリーダーなのに。
美智子さんはとても情けない気持ちになったという。
「こんなことも知らなかったんて。それでいろいろと調べてみたんです。最近ではIKEAなどでも着替えの時間にお給料が出ることになったなんて話もありました。結局もう1人のバイトリーダーと店長と話し合い、着替えの時間は特別なことがない限り、5分×2の10分とルールにし、着替え前にタイムカードを切ることになりました」。
しかし、ルールを変更したにもかかわらず、畠山さんはお構いなし。始業時間にタイムカードを切り、悠々と準備をし、10分以上遅れて業務につくこともあるという。さらに若いバイトチームによからぬことをけしかけているというのだ。
【後編】でも引き続き、どこからか遅刻なのか問題についてさらにふかぼっていこう。
取材・文/悠木 律