ハンバーガーメニューボタン
FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
LIFESTYLE 女たちの事件簿

【親の介護という地獄】父がせん妄に、そのとき一家に起こったこと。

無料会員をしていただくと、
記事をクリップできます

新規会員登録
不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

介護は綺麗ごとだけでは済まない。相手がどんなに慈しみ育ててくれた親であっても。むしろ愛する親だからこそ、精神的に追い込まれて行くのかもしれない。

突然「その時」がやってきた時、どう対応すべきか、何ができるのか。実家が大阪にある栃木市在住の邦子(仮名)の場合は、父の手術後に予期せぬ事態が起こり……。

 

※この記事は取材を元に構成しておりますが、個人のプライバシーに配慮し、一部内容を変更しております。あらかじめご了承ください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

©︎getty images

夫と三歳の息子と穏やかな毎日を過ごしていた邦子の日常が一変したのは、父の動脈瘤が発覚してからだ。

命を脅かすようなものを抱えているとは思えないほど父は元気だったが「破裂したら命の保証はできない」と医師に告げられた。さほど難しい手術ではないことを聞いた父は、医師の勧めもあり迷わず手術することを選んだ。

当日、笑顔で手術室へ向かった父を、実家の隣町に住む姉の道子(仮名)、福岡に単身赴任中の兄の栄介(仮名)と見送った。

10時間にも及んだ手術の後、父は麻酔が切れてもなかなか目覚めなかった。術中に心筋梗塞と脳障害を起こしたと医師から説明があり、邦子たちは混乱。

「少し前まで元気だった父がなぜ?」

到底、受け入れることはできなかった。

 

一週間後、ようやく目覚めた父は別人になっていた。「せん妄」という意識障害により、弱った体で訳の分からない暴言を吐きながら邦子と道子を睨みつけては威嚇した。見たことのない父の形相だ。

©︎getty images

一般病棟に移ってからもせん妄の症状は治まる気配がなく、看護師を寄せ付けないことから、日中はできるだけ家族が付き添うよう病院に求められた。もちろん邦子はそのつもりでいたが、まだ目が離せない小さな息子を長時間病室でじっとさせておくのは不可能に近い。

入院生活が長引くことを想定した邦子は、ダメ元で実家近くの保育園を訪ねた。事情を説明すると「一時預かり」で受け入れてくれることに。

兄は福岡に住んでいるため、何もできないことを謝罪しながら、金銭的に困るようなことがあれば自分が出すと言ってくれた。義理の姉を巻き込むつもりはなかった。父が正気なら、こんな姿を見せたくないだろうし、まずは実子の自分たちがすべきことだと思っていたからだ。

姉は保育園へのお迎えなどは快く引き受け、夕飯をご馳走してくれるなど十分すぎるほど邦子と息子を労わってくれたが、病院へはなかなか来てくれない。第一子である姉は父に丁寧に、言い換えれば厳しく育てられたことから、父の罵声をきくと体調が悪くなるという。

父の暴言にまみれる日々は想像以上に辛かったが、自分が頑張れば頑張るほど、父が元の姿に戻れる日が近づく、そう思えば力が湧いてきた。食事の介助からおむつ交換、清拭、着替え、体調が良さそうな日は車いすに乗せて散歩をし、父が夜にはぐっすり眠れるよう勤しんだ。何をしても怒鳴る父が、いつかは笑顔を見せてくれることを信じて。

けれど父の容体は数か月経っても一進一退。肺炎を起こし余命宣告をされた時は目の前が真っ暗になったが、幸い命は取り留めた。

とはいえ、予断を許さない、報われない日々に、邦子の希望はどんどん失われ、先が見えない恐怖に支配されていった。


後編へ続く

 

Text:女の事件簿調査チーム

 

 



RANKING

1
2
3
4
5
1
2
3
4
5