あるサイトのアンケートでは、20代以上の7割が学生時代の同窓会に参加したことがあるという。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏が言う。
「人生100年といわれる現代では、同窓会を頻繁に行なってかつての旧友とコミュニケーションをはかり、楽しんでいる人も少なくありません。その一方で、同窓会で起きるトラブルも頻発していると聞きます。少し前には、同窓会の二次会で殺人事件が起きたことも記憶に新しいですね」
高校卒業後は地元を離れる人も多いが、同級生と過ごした日々を忘れることはないだろう。同窓会活動が活発であれば、なおさらだ。
顔を合わせたとたんに、学生気分がよみがえる。昔話で盛り上がったり、自慢話にうんざりしたり。ときには微妙な雰囲気になることもあるが、今回はそんな話をしよう。
それは、クラスの女王様の欠席から始まった……。
坂野由貴(仮名)は、今年40歳になる会社員。夫と小学生の息子との3人家族だ。
由貴はずっと地元暮らしをしている。高校時代の友人たちとは交流が続いており、何人かはママ友にもなった。由貴の母校では同窓会は学年ごとに集まる決まりなので、参加者不足ということはない。もちろん、最初の年ほどは集まらないが、最近は毎年参加のメンバーで落ち着いている。
同窓会の時期が近づくと、地元組の間ではその話題ばかりだが、今年は特ににぎやかだ。
それは、今年の同窓会が、恩師の還暦祝いを兼ねているから。由貴たち自身も不惑を迎えるため、節目の年なのだ。
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近所にある由貴の実家は、昔からにぎやかな家だった。母がもてなし好きなせいもあるのだろう。事あるごとに親族が集まるし、由貴の友人たちは今もよく訪ねて来る。
いつものように由貴たちが女子会をしていたときのことだ。同窓会の話題になり、友人のひとりがつぶやいた。今年の同窓会、大丈夫なのかなあ……と。
「え? 何かあったの?」
由貴が思わず聞き返すと、その友人は口ごもった。
見渡すと、みんな微妙な顔をしている。
「今年は、奈々子さんが来られなくなったの。だから困ってるみたいよ」
「不幸があったらしくて……」
山村奈々子(仮名)は、学年の中心的存在だった。地元を離れてはいるが、毎年必ず帰省し、同窓会にも参加していた。いやむしろ、同窓会を仕切る側として、今も中心にいる人なのだ。
その奈々子が帰省しないとなると、たしかに困るだろう。同窓会は、奈々子を含めた数人のグループが、いつも取り仕切っていた。でもそのグループは、奈々子あってのものなので、彼女抜きではまとまらないのではないか……。