田舎暮らしの長閑さは、ときに現代人を強く惹きつける。しかし、そんな田舎だからこそ起こる問題も多くあると危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は話す。
「田舎は隣近所との物理的な距離は遠いですが、心理的な距離が近く、その分プライベートが晒されやすい危険が潜んでいます。例えば、東京に住んでいれば、隣にどんな人が住んでいるか知らないという場合もあるでしょう。しかし、田舎ではそうはいきません。もちろん、すべてではありませんが」
確かに田舎の方がパーソナルスペースが狭いことは事実だろう。実際、今回の事件でも犯人の人柄についてインタビューを受けている近隣の人からは「大学を中退した」など、プライベートなことにまつわる発言が見受けられた。
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橋爪優子さん(仮名・56)が住んでいる場所も紛れもなく田舎だ。
「個人情報が筒抜けなのは、当たり前。変な話、私が子どもの頃は付き合っている相手とかも巡り巡って、ご近所さんから親が聞いて知るみたいな感じでした。閉鎖的な環境に嫌気がさしたこともありましたが、今ではまぁ、これが普通という感じですね」
このような環境でいざこざが起こることはないのだろうか。
「そりゃありますよね(笑)この間もちょっとしたトラブルがあったんです」
トラブルの発端となったのは、町医者の妻である女性のある発言だった。
「彼女には3人の子どもがいます。彼女の話の9割は、その子どもたちにまつわるもの。特にご長男はこの田舎町から国立大学の医学部に入学したこともあって、彼女の1番の自慢。道端で彼女に会って捕まるとマシンガントークで自慢話をされるのが常です」
優子の暮らす田舎町では大学進学はかなりハードルが高い。なかには彼のように国立大学にいくものもいるが、コロナも相まって県外に出る人は少なく、このご時世であっても高卒で働く人もいるくらいだ。
そんな彼女が最近、優子が通っている華道教室に入ってきたんだという。
「月に2回のお教室でメンバーは8人くらい。公民館で行う簡単なもので、おしゃべりのために集まっていると言った方がいいかもしれません」