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LIFESTYLE 女たちの事件簿

【後編】「M-1って長くね?」教員たちを悩ませるのは、short動画という名の頭空っぽ人間製造機だった。

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「本物の感動と出会えば、short動画なんて捨ててしまいますよ」

そう力強く断言するのは、関西にあるバレエ専門学校でバレエの歴史などを教える華さん(34歳・仮名)だ。

「バレエだけではなくて、ダンスや演劇に夢中になっている子たちは、自分たちの姿をTikTokにあげることはしますが、それを見ることに時間を費やすような真似はしません。そこにあるものとは全く違う表現を生み出さないといけないのに、今流行っているものの動きばかり見ている時間がもったいない」

華さんの生徒たちは、毎週のように全幕バレエを見る機会に恵まれ、目の前でプロダンサーたちが踊る姿を目にしている。

「動画よりも、生の方が感動が強いに決まっていますからね。私は生徒たちに、動画で見るよりも本物を見なさいと教えています。景色もスイーツも、人の撮影した動画なんかで感動するはずないでしょ?」

華さんの言葉は自信に満ち溢れていてクリアだ。

「私の生徒たちは、目標も明確でしたいことが決まっている、いわば一般的な高校生に比べると特殊な状況にある子たちですけど、『生の方が感動できる』って事実はどんな高校生にとっても同じなのではないかしら?」

華さんはそう言って笑う。

「生で見て感動するという経験を味わうよりも前に、short動画で簡単に『へー』とか『おー』とかお手軽に思ってしまえる経験をしてしまったら、わざわざ足を運んで本物を味わおうなんて気になれないのかもしれませんね。なんかそれって可哀想。short動画に出会う前の幼児期に、short動画よりも楽しいと思えるものや心を震わせるものに出会ったり、自分の手で何か成し遂げる感動みたいなものを体験したりしなかったのかしら」

華さんが何気なく話す言葉の中に、現状を打破するヒントが隠されているように思えた。

TEXT:八幡那由多



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