【後編】「M-１って長くね？」教員たちを悩ませるのは、short動画という名の頭空っぽ人間製造機だった。

「このままいくと、今の子どもたちは自分で選択することはできないし、集中力はないし、記憶に残るような深い感動を味わったことがないままで大人になってしまいます。そして、そのことを不幸だとも思わない。どんな大人になってしまうのだろうと思うと、恐怖感を覚えませんか？そしてまた、そういう大人が親になった時に、子どもをどうやって育てるのか……」

前出の聡子さんは、子どもたちを見ていると、先を憂える思いしかわいてこないのだと嘆く。

「short動画が流行したことで、彼らはそれを『見る』だけでなく、自分たちも動画を『あげる』立場になっています。自分自身の写真や動画を世界中に垂れ流すことに抵抗がない。学校の片隅で軽く踊っている自分たちの動画を撮ってTikTokにあげるなんて、当たり前のことだと思っています。そして、そういう何気なくあげた動画がバズってアイドルになる子がいるといういびつな世の中でしょう？なんだかそれを受け入れられない私が、『年寄りだから』ということでは済ませられない問題があると思うのですが……」

聡子さんの言葉は歯切れが悪く、暗い。
彼女の言葉が暗いのは、対処法を思いつけないからだろう。