ニッセイ基礎研究所によると、2019年に高齢者が都内で引き起こした死亡事故がきっかけとなって、一時は免許を自主返納する高齢ドライバーが増加したものの、問題の2019年をピークにそれ以降は減り続けているという。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、高齢者の免許自主返納がなかなか進まない現状についてこう説く。
「交通網が発達している都市部では、免許を返納しても、何とか交通手段を確保できるという高齢ドライバーは少なくないでしょう。一方、地方では路線バスの運営が縮小傾向にあったり、地域のコミュニティバスの運行が限定的であったりするなど、ひとたび免許を返納してしまったら自由に行動できなくなる場合も。生活が一変してしまうことに二の足を踏んでしまい、返したくても免許を返せない高齢者も多いというのが実情なのでしょうね。また、タクシー割引が使いづらい制度となっている地域もあるようです」
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今回お話を伺った越中日菜子さん(仮名)は首都圏在住の会社員。
地方出身だが大学進学時に上京後そのまま就職し、現在は都内の会社に勤務しながら会社員の夫と2人の子供とともに分譲マンションで暮らしている。現在結婚20年目だという。
「下の子が高校1年なので、ほとんど子育ては卒業した気分なのですが、最近大変だったのが田舎で2人暮らしをしている両親のことです」
日菜子さんの父親はもうじき83歳、母親は77歳である。
「私には弟がいますが、長く海外に住んでいます。仕事がダメにでもならない限り、帰ってこないと思います。なので両親を気にかけてあげられるのは、事実上私だけなんです」
日菜子さんの父親は地元では有名な企業で営業マンとして働き、定年退職後も再雇用されて後進の指導などにあたっていたのだそう。70歳ですべての仕事をリタイアしてからは、趣味のカメラを楽しむ生活を送っていたとのことだ。
「高齢者ドライバーが引き起こした池袋の事故、ありましたよね。衝撃でした。あの事件のころ父はすでに78か79歳。当時、私はすぐに電話でお父さんもそろそろ免許返納した方がいいんじゃない?と言ったんです」