しかし、そこから徐々に復調しながらも、通常に近い生活ができるようになるまでには2年ほどかかった。いつまでも休職しているわけにも行かず、前の職場はやめざるを得なかったそうだ。
「息子はもう卒業していますが、結局息子の所にも行きませんでした。実は夫とは離婚したんです。愛情なんてないんだな、私は妻という装置だったのだなと思ったら、人生をやり直さないといけないと思えたんです」
現在の咲子さんは、未だ症状が残る指関節の痛みなどとつき合いながら、資格取得に向けた勉強をしている。
四半世紀も連れ添った夫との離婚には大きな勇気を要したが、人生をやり直したいと思えるほどにまで心身が回復したことが今は嬉しいのだという。
大きなホルモン変化は長い人生の中で何度も起こり、人によってはその変化に対応しきれず心身のバランスを崩してつらい思いをする。当事者ではなくても「知らなかった」は通用しない、自然の理だ。
TEXT: 中小林亜紀
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