場所が場所だけに夫は必死で堪えていたし、南も「お母さん、いい加減にして」と諭すのが精一杯だった。
帰り道、泣き崩れる南の背中をさすりながら、夫は怒りを必死に抑えた様子で「悪いけど、お義母さんとはやっぱり合わない。ごめんな、南。あの人、もう顔も見たくないよ」と呟き、南は「当然よ」と答えたのだという。
「夫の父親は焼き鳥の屋台で稼いで男の子4人を育て上げたと聞いてます。焼き鳥屋を継いだのは末っ子の夫だけ。彼はより進化した店を出したいと、割烹や居酒屋でも修行を積んだ努力家です。オリジナルの創作料理も凄く人気があるんですよ。焼き鳥屋にプライドを持っているし、何より母の言葉は自分というよりも実父への侮辱に感じたのではないでしょうか」
父親の死後、南夫婦はしばらく意気消沈していたが、生活は待ってはくれない。落ち込んだ気分のまま、2人はまた忙しい毎日を過ごすようになる。
ところが、母親の方はすさんでいく一方だったという。南がいつ電話をかけても電話に出ないか電池が切れているか、出ても呂律が怪しかった。
「時々足をのばして顔を見に行くと、だいたい酔っ払ってるんです。お酒がなくなったのか、飲んでいない日でも、電気もつけずにテレビの前に座って黙っているんですね。食事を持っていってもあまり手をつけないし、親戚からも心配の電話が相次いでかかってくるようになりました。南ちゃん、しばらく同居したほうがいいよって」
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