15分くらい経った頃だろうか、リビングが静かになった。夫は顔を洗っているようで、水の音が聞こえてきた。
「意を決して外にでました。夫はいつもの顔に戻っており、ごめんといい、それから崩れるように泣き出してしまいました。その光景は一生忘れることはないと思います。大変なことになったなと」。
その日、容子と夫は仕事を休み、病院に出かけた。混み合っている総合病院の待合室で、容子は絶望に打ちひしがれていた。
「診断は若年性アルツハイマーでした。まさか、のひとこと。きっとほとんどの人がそうなんじゃないですか、こんなに若い歳でボケちゃうなんて……。お先真っ暗とはこのことです。本当にどうしたらいいのか……。それに症状から見てもかなり進んでいるとのことでした。これから、徘徊の頻度が多くなることが考えられると言われました。またあんなことが起こると思うと……」。
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