ハンバーガーメニューボタン
FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
LIFESTYLE 探偵は見た!

「孫のケガレを祓ってほしい」インチキ祈祷師にドップリ依存…探偵がクライアントにどうしても伝えられなかった「衝撃の事実」

無料会員をしていただくと、
記事をクリップできます

新規会員登録

占い、宗教、霊媒……解決できない悩みを抱えた時、目に見えない力に頼る人間がいる。そしてそれを利用し、お金を稼ぐ人間もいる。それは一縷の光のように見える、奈落の底の入り口でもある。

探偵は時に、そんな世界について依頼を通して知ることがある。

「どうか『日祷』というお坊さんを探してください! もし、彼が亡くなっていたら、そのお弟子さんでもいいんです! 孫の事でどうしても相談したいことがあるんです! お願いします……」

82歳の依頼者女性は、すがるように言った。

【対象者情報】

「日祷」本名:青柳貞晴(仮名)、N宗 所属、現在生きていればおよそ75歳

©Getty Images

依頼者は30年ほど前知人から勧められ、夫婦関係の悩みの原因となる憑き物を「祓う」ための祈祷をこの人物から受けたのだという。

すると、みるみる夫との関係は改善したそうだ。それ以降依頼者は5年間にわたり、品川区内にある「日祷」とその妻の自宅兼祈祷所まで足繫く通い、その度に高価なお布施を支払った。

しかし25年ほど前、「伊豆に寺を建てることになった」と、日祷夫妻は突然品川の自宅を引き払い、伊豆に移住してしまった。依頼者はその頃ちょうどその頃体調を崩しており、伊豆まで足を運ぶことが困難であったそうだ。また歳を重ねるにつれて足を悪くし、とうとう一度もその伊豆の寺を訪問することが叶わなかったという。

そのため、現在依頼者の手元に残された情報は、最後に日祷から受け取った1枚の年賀状だけであった。あまりに年月が経ち過ぎているため、調査には不安があった。

まず我々は、日祷が寺を建立したという伊豆の住所を訪れた。

©Getty Images

そこは車が無くては不便極まりない、山奥の廃れた別荘地内にあった。

事前の調査で、住所地の土地家屋は、2年前に日祷夫妻とは無関係の会社に売却されていると確認済みである。確かに住所地に建てられたごくありふれた2階建ての一軒家には、その会社の表札があった。

ただその一軒家の裏側に、一風変わった平屋建ての小屋がある。よく見れば、寺院のような雰囲気がなくもない。隣家の住民によれば、どうやらそこは日祷夫妻が「寺院」と呼んでいた場所に間違いないようだ。

しかし、日祷は約5年前に亡くなっていたという事実が発覚。それ以降、ここには誰も住んでいないそうだ。

夫婦には子どもがいなかったため、日祷の死後は一軒家に妻が飼い犬と暮らしていた。しかし犬が亡くなったことで認知症が進行し、2年ほど前に介護施設に入ったらしい。平屋に関して夫婦はここを「寺」とは呼んでいたが、信者を見たことは一度もなく、たまに清掃の手伝いをしにくる年配の女性が出入りするだけであったという。

また、その後の調査で日祷の墓が、伊豆のある霊園内に所在することもわかった。しかし墓標には「日祷」と刻まれている他、彼の本名と、飼い犬の名前が刻まれているだけ。管理事務所の職員から、お参りに来る人物はいないという事実も確認した。

日祷は逝去し、弟子の存在など影も形もない。これでは、依頼者が落胆することは目に見えている。せめて日祷の祈祷師としてのルーツから、代わりになる祈祷師が見つからないだろうか……我々は、そんな想いにかられていた。

そこで、まずは全国のN宗寺院教会が運営していく上で、必要な諸事務を担当する機関である「宗務院」で日祷に関する情報を確認した。過去に日祷が所属していた寺院を確認するためだった。

しかし驚くべきことに、「日祷」という僧侶がN宗に登録している事実はなかったのだ。

N宗の僧侶ではなかった「日祷」。彼はいったい何者なのか、依頼者は騙されていたのだろうか? さらに調査を進めると、予想もしなかった事実が明らかになった。

TEXT:探偵 こころたまき

▶︎後編に続く


RANKING

1
2
3
4
5
1
2
3
4
5