「『素直に幸せを喜んであげたらどう?』と言ったら、鬼の形相になって、『亮太もそこそこの難あり物件だからね』と言い出したんです」
物件と呼ばれ、温厚な亮太もさすがに腹が立った。
「僕は佐智子と楽しく暮らすために結婚したわけで、妊娠とか出世とかは二の次だ、と言いました。人を物件と言うなんてどうかしているから撤回してくれと」
佐智子は不敵な笑みを浮かべ「私と楽しく暮らしたいなら給料を上げてくれない?」と言った。子どもを作るという義務を果たしてから文句を言え、とも。
「給料が安いという話は、度々口にするようになっていたんですが、妊娠のこともしつこく言われ続けていました。子作りを迫られすぎてプレッシャーになったのか、実はその頃すでに僕のアレは彼女に対してほとんど機能しなくなっていたんです。
そのことで、ベッドの中では大げさにため息をつかれ、恥をかかされたとか、私に魅力がないみたいじゃないかと、罵られるようになりました。そして、そのことを昼間のリビングでも堂々と言うようになったんですね」
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