【交通事故鑑定人は見た！】一時不停止vs直進、どちらの主張が正しいのか？

■まとめ

中島氏はこういう。「この事故の態様は、クルマBのドライバーの主張である、「（クルマBは）一時停止線付近で停止していたところ、そのクルマBに向かってクルマAが進行してきて、クルマBの左前部とクルマAの左側面が衝突した」という説明が妥当と結論づけました。なぜクルマAがわざわざクルマBの方に向かっていったのか、その理由について厳密な判定はできませんが、人間は注視している方向に（意識せず）引き寄せられるように移動してしまう傾向があります。

例えば、スキーの初心者同士の衝突で、お互いに衝突する危険は認識していながら、それぞれが相手だけに注意が向いてしまっているために、旋回の向きや程度まで「ちょうど衝突する」ように合わせてしまうことがあります。このとき当人たちはそれぞれ「自分は避けようとしていたのに、相手がぶつかるように動いた」と信じていることが多いのです。」

目に入ったクルマのほうへ無意識にハンドルを切っていたというのは、にわかに信じにくいが、注意散漫に運転していたとすれば、危険を感じた際に、無意識に人間の習性が出てしまった、というのはわかる気もする。我々も気を付けなければならないと感じた事例であった。

Superviser：Hiroshi Nakajima
Text：Kenichi Yoshikawa
Photo：Raptor,GettyImages
Edit：Takashi Ogiyama