■踵をつける、つけないよりも、運転姿勢や履物のほうが、運転操作にとっては重要
この、踵をつけてのブレーキングについては、「踵を支点にしてペダルを踏みかえていると、踏み間違えを起こしやすい」といわれることがある。が、踏み間違えについては、足を上げて踵をフロアから離してのペダル操作のほうが起こりやすい、とする説もあり、筆者はどちらでも起こりうることだと考える。
また、「踵をつけてのブレーキングでは、踏力が足りない」とする人もなかにはいます。が、たしかに1970年代ごろのクルマには、ブレーキブースターのような倍力装置がなかった(もしくはオプションだった)ため、ブレーキングには大きな力が必要で、踵をつけたまま操作する、なんてことはとてもできるものではなかったのだ。しかし、いまのクルマにはブレーキブースターが備わっているため、踏み込む力は小さくても、十分にブレーキを効かせることができる。
「どちらの操作方法がより適切か」については、筆者はどちらでもやりやすいほうでよいと考える。普段、踵をつけてブレーキングをしていても、強くブレーキをかければ、自然と踵はフロアから離れる。踵をつける、つけないよりも、「いざ」というときにペダルを奥まで踏み込める用意があるかが重要なのは間違いない。
たとえば、ブレーキを奥まで踏み込める位置にシート前後位置があわせてあるか、左足はフットレストできちんと踏ん張れているか(MT車ならばクラッチを奥まで踏み切れるか)、履物は適切か、などのほうが、踵をつける、つけないよりも、より重要だ。また、足のサイズが小さな人は、踵を付けてペダルの操作はしづらい(踏み外しそうになる)と思われるので、無理に踵をつける必要はない。
■踵の位置にこだわることなく、確実なブレーキ操作ができるような準備を
現代のクルマには多くの安全装備が備わり、緊急時にはドライバーがブレーキペダルを踏む速度から判断して、ブレーキが足りなければ不足分を補ってくれるシステムがある。が、いま現在のシステムはあくまでサポートしてくれるだけであり、事故となった際の責任はドライバーにある。
責任がある以上、確実に操作できるよう、準備をしておくことが、ドライバーの義務。踵の位置にこだわることなく、常に確実なブレーキ操作ができる準備をしたうえで、カーライフを楽しんでください。
Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:Adobe Stock,MMM-Production
Edit:Takashi Ogiyama