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HEALTH 「超名医に聞け!」

80歳の残歯率は、アメリカの半分。いつの間にか、日本は歯医者さんの「超後進国」になっていた。

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——お話を、冒頭の80歳での残歯率に戻します。なぜ日本人の歯科医療は「後進国レベル」なのでしょうか。保険制度もあって、歯医者さんも多い。それに、日本の医療は世界トップクラスだという話もよく聞くのですが。

「歯科治療に関しては、その言説は的外れです。そして皮肉なことに、日本のデンタルヘルスが著しく低いのは、世界に誇る国民皆保険制度が影響していると私は考えています。日本全国、どこへ行っても1割から3割の自己負担で「平等の医療」が受けられる。このシステムの功罪で、日本人の治療の内容が「及第点ギリギリ」となり、患者さんからも「予防医療」という概念を奪っているのです」

——国民皆保険制度の功罪とは、具体的にはどういうことでしょうか?

「医療には、保険診療と自由診療があり、患者さんが自由に選ぶことができます。保険診療は経済的な負担が少ない代わりに、国が決めた限られた治療しかできません。言葉を換えていえば、「ギリギリ病気ではない」レベルに持っていく治療しかできないのです。


©︎gettyimages

数年後に再発して、もっと悪い結果になることをわかっていながら、決められた治療技術と材料でしか施術を行えないんです。たとえば歯の詰め物。保険診療で小さい虫歯治療にはレジンというプラスチックが使われますが、これは数年経つと歯との間に隙間が生じ、高い確率で虫歯が再発し、また歯を削って銀歯の詰め物をしなければならない。さらに数年後に虫歯が再発して痛くなり、今度は神経を抜かなければならない。神経がなくなると歯はもろくなり、割れて抜歯になってしまう。このような悪循環を現場の歯科医師は、もちろん百も承知ですが、それを分かった上でもやり続けざるを得ないんです。これが保険診療の大きな功罪です」

——安くて手軽に通える一方で、「完治」のサイクルには乗らないということですね。

「その通りです。また保険診療では一回の治療であげる保険点数が限られているので、歯医者さんはなるべく多くの患者さんをさばいて稼ぐ必要があります。そうすると治療の質が低下する。すると、さらに虫歯や根の病気などのトラブルが増えて引き続き点数を稼げる。こんな悪循環が、いま日本で起きていることなんです」

また、患者さんが歯医者に気軽に通えるということは、予防意識の欠如も助長させます。「虫歯になったらまた治しに行けばいい」という考え方では、「虫歯にならないようにする」というデンタルケアへの積極的な意識は生まれません。

保険のないアメリカは、日本と違って一本歯を治療すると10万円ほどかかることから、予防に対する意識が日本とは桁違いです。80歳の残歯率が日本の倍以上という数字は、この予防意識の差によるところが多いと思います」

知られざる日本の歯科医療の現実と、そこに巣食う闇は驚くほどに深い。

さらに自分の歯を失うことが、寿命を決めるという根深医師の警鐘は、◇歯周病が寿命を縮める。現役歯科医が語る、国民皆保険制度の問題点◇で詳報する。

近年聞かれるようになった口内フローラについても解説。大切な家族や、自分の歯を守り抜くために読み進めてほしい。

▶︎歯周病が寿命を縮める。現役歯科医が語る、国民皆保険制度の問題点。


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