売店で、隆士と同じくらいの年齢の品の良さそうな夫婦が仲睦まじく土産物を吟味しているのを見た香織が、こう言ったのだ。
「ねぇ、素敵なご夫婦だよね。私も将来あんな風になりたいな」
隆士はドキッとした。
香織が自分と同じ年齢、つまり53歳になったとき、隆士は75歳だ。その頃、自分たちの関係はどうなっているのだろうか。老いた自分を、香織は愛し続けてくれるだろうか。
香織のことは誰よりも愛している。この先別れるなんて、考えられない。だが、妻と離婚し、娘たちを捨ててまで、香織と再婚する未来はどうしても想像ができなかったのだという。
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