「その日は妻が韓国アイドルのコンサートで東北地方に遠征、娘たちはテニスの試合のため、泊まりがけで出かけていました。家に帰らなくてもバレない、という気の緩みがあったと思います」
一軒目の居酒屋を出る頃、時計の針は0時を回ろうとしていた。いつもなら急いで終電に駆け込むところだが、足は二軒目のバーへと向かっていた。
「もう楽しくて楽しくて……。歯止めが効かなくなっていました。今まで抑えていた気持ちが爆発した瞬間です」
真面目な隆士は結婚して17年、浮気もせずギャンブルもせず、ただ家族のためにコツコツと働いてきた。女性と遊びたいなどという浅はかな願望はなく、むしろ不倫する男女を軽蔑していた。ただ、香織と出会ってしまったのだ。
「バーを出ると時間は深夜2時をまわっていました。タクシーで帰ろうかと香織に尋ねましたが、まだ一緒にいたいと言ってくれました。私も同じ気持ちで、このまま帰宅するなんて到底できそうもありませんでした」
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