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LIFESTYLE 女たちの事件簿

「金策でおかしくなって…」移動式カフェオーナーが「夫の弟」に体を捧げた「背に腹は変えられない理由」

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不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

帝国データバンクによると、2023年2月現在、判明しているだけでも全国5181件の法人および個人事業主が新型コロナ関連で倒産し、その中で最も多く倒産した業種は飲食店なのだという。これは、コロナ特化型の給付や融資といった救済措置効果が、すでに薄れつつある現状が見て取れるデータといえるだろう。

夫が経営する飲食店をともに切り盛りしてきた橋口雪乃(仮名)は、そんな飲食業界のコロナ不況の渦に、今まさに飲み込まれそうになっている一人。

しかも、ある出来事がきっかけで、問題は借金や会社の存続だけに留まらぬ事態に。詳しく話を聞いた。



「もう、自分という人間がわからなくなってます。何がつらいって、そのことが一番つらいかもしれません」

ナチュラルなボブヘアと整った目鼻立ちが印象的な橋口雪乃(仮名)は36歳。

大学の同級生だった夫と移動式カフェから飲食店を始め、やがて路面店カフェと居酒屋をオープンし、数年前に法人成りしたという。現在両店舗はコロナ不況の後遺症に苦しみながらも、何とか持ちこたえている。苦労人だ。

「コロナ以前から不景気を肌で感じてはいましたし、とくに居酒屋のほうは売上が落ちてきていました。ですが、常連さんのお引き立てもあって、何とか頑張ってやっていたんですよ…それがコロナで谷底に突き落とされましたね」

コロナ禍では、飲食店に対する経済的な救済措置は手厚かったようだが…。

「それ、よく言われるんです。売上以上に給付を受けて、旅行行ったり車買ったりしてる人もいるんでしょって嫌味言われることもありました。そういう方もいたのかもしれませんが、うちなんかは全然です」

先ほどまで憔悴しきった様子だった雪乃だが、にわかに緊張した顔つきを見せる。

「少なくともウチは、コロナの少し前からとくに居酒屋の経営が低調になってました。銀行から借り入れをして常に余裕なくやってきてたので、どんな救済措置も焼け石に水でした。ゼロゼロ融資といったって、借金であることに変わりはないので、融資を受けても受けなくても地獄が待っていたということです」

今回聞いた雪乃の悩みは、こうした金策への苦労に端を発している。

「ダンナと金策に走り回る日々が続いて、もう大変でした。とにかく借りられる所からは全部借りてる状況なんです。私たちが電話すると、親戚などはみんな二言目には金か?って聞くようになり、お金の無心しかしてこない夫婦だと思われています。きついですね」

借金しているから、何気ないことで電話したくてもしづらくなり、結果的に金を借りたい時だけ連絡するようになってしまう。借金ある人あるあるですよ、と雪乃は言った。

「銀行はもう見向きもしてくれないですし、万事休すかな、なんて思ってた時、夫の弟の顔が浮かびました。兄弟の仲は良くないですが、弟は不動産投資がうまくいって羽振りがいいという話を聞いていたんです。夫はあいつだけには借りたくないとムキになってましたが」

十数年前、コツコツと商売を軌道に乗せて頑張ろうとしていた夫は、不動産投資を始めた弟に「そんなアヤしいもの、やめとけよ」と声をかけ、喧嘩になったことがある。飲食だって十分不安定だろ、と返され、夫は絶対に成功してやると息巻いていたのだという。

「最初のうちは弟の不動産投資はうまくいかなかったようで、周囲からもそれ見たことかと言われたのですが、本人の努力なのか才能なのか、今では手広くやっている賃貸経営がどれも安定してきて、凄くお金持ってるようだと、夫の親から聞いたんです。でも、女癖が悪く、何度か浮気がバレて奥さんと離婚していて、今は一人で3LDKのマンションに住んでます」

夫は弟に頭を下げて金を借りるくらいなら破産する、と豪語した。しかし、当座は100万円ほどあれば凌げる算段がついていたため、雪乃は諦めたくなかった。

もちろん、貸してもらえるかどうかは未知数だった。夫の弟は思ったことをズケズケと口にするタイプで、雪乃も得意な相手ではない。冷たい人という印象が強く、頭を下げたところで、100万もの大金など貸すものかと突っぱねられそうな気もした。

「でも、すでにそれ以外の夫婦の親兄弟、友達からも少しずつお金を借りてしまっているんです。夫は、お互いにもう少し知り合いに頼んでみようと言いましたが、それ以上貸してだなんて誰にも言えませんでした。みんな大変な思いをして生きているのに…言えませんよ。本当に申し訳なく思ってます…今どき羽振りのいい人なんて、周りを見渡してもいないです。それで、私、夫に内緒で頭を下げに行ったんです、夫の弟に」

雪乃は夫の弟が住むマンションまで出かけていき、エントランスでインターフォンを押した。堅牢で豪華な造りのマンションだった。地を這うように生きている自分たちのような人間がいる一方で、こんな所で優雅に暮らしている人がいるなんて、何だか信じられない思いがした。

「応答した弟は、え? 雪乃さん?って目を見開いているのがわかるような口調で言ってましたね。アポなしで会いに行ったこともあり、かなり驚かれました。夫が弟と距離を置いていることは彼も知っているので、いきなり嫁が訪ねてきたら、それは何事かと思うでしょうね」

マンションの最上階に通され、広々とした玄関の大理石に臆しながら中に入ってリビングへ足を踏み入れると、雪乃はその広さと眺望の素晴らしさに息を飲んだという。

「絵に描いたような成功者ね、と声をかけても弟は何も言わなくて、機嫌が悪いのかなと不安になりました。顔色を窺っている卑屈な自分が嫌でしたね。お金のために持ち上げてるみたいで」

雪乃は革張りのソファに座るよう促された。しばらく待っていると、弟はコーヒーの入ったカップを持って現れた。改めて正面から顔を見ると、母親そっくりの夫に対し、弟は父親寄りの顔をしていて、兄弟とはいえ他人のようだった。また、男性にしては高音な声で話す夫と比べ、弟は低くて渋い声をしている。

「マグカップしかないけど良かったらどうぞ、とコーヒーを出してくれて、拍子抜けしました。そんなおもてなしができる人だと思っていなくて…。先入観ですね」

弟は雪乃の訪問の目的を見抜いていたという。

「久しぶりにお会いするうえに、突然お邪魔して本当に不躾なんだけど、お金をお貸しいただけないでしょうか、お願いしますって頭を下げたんです。そうしたら、そんなことだろうと思ったって一笑に付されてしまいました。オレの所には金目的の人間しか来ないと自虐的に言ってました 。
雪乃は、表情や物言いは無愛想だが、感触は悪くないと感じたという。

「お金を貸していただけそうだなって、直観的に思って安堵したことを覚えてます。それで、そのあとお喋りしたんです。休みの日でしたし、夫にはいとこにお金の相談してくると言って出てきていましたから、わりと長い時間話しました。ちょっと老けたなあとか、金に困ってるって顔に書いてあるとか、いろいろズケズケと言われましたが、それでもご自身も離婚の経緯とか投資で失敗したことなんかを、思いのほかざっくばらんに話してくれましたね。意外でした」

雪乃は、相槌を打ったり愛想笑いをしたりしながら弟と話している自分が、お金のためにへつらっているようで嫌だったが、同時にそればかりでもない心地良さも感じていたという。

「私の夫はお人好しで人情派というか、話し方も優しい感じ。年子の兄弟なのに性格や表現の仕方は真逆なんですよね。夫は実際にいい人なんだけど、いい人だと思われなければならないというプレッシャーを自分にかけているような所もある人です。それに比べて弟は、別にいい人だと思われなくてもいいっていう潔さがあるっていうか…喋っていると、こちらも気を遣わなくて済むなあと思いました」

夫が毛嫌いしているほど、弟は兄を疎ましく思っていないこともわかったのだという。

「兄貴はオレから金借りるなんてプライドが許さないはずだから黙っててあげてよ、雪乃さんって言ってくれました。子どもの頃は、とても仲が良かったのだそうです」
お金を借りることができた安堵感と思いがけない気遣いに、雪乃は思わず満面の笑みを見せたそうだ。

「嬉しそうだなあって言われましたね。で、ちょっと待っててと言って、家には今たぶん三十何万かしかないけど、急ぐならこれだけ持ってけば?と、三十数万円を持ってきてくれたんです。私の隣に座ると、はいって感じで手渡してくれました」

 残りは用意しておくから、明日また取りに来てほしいと言われ、雪乃は頷いて頭を深々と下げ、感謝の言葉を口にした。

「それで、頭を下げた時か上げかけた時、抱きしめられたんです、きつく。何が起きたかわからなかったんですが、頭を後ろから支えるようにしてキスをされて、トップスの中に手を差し入れられたので、思わず体をかわしました」

弟から体を離した雪乃は一言、びっくりした、と言うことしかできなかったという。しかし、不思議と怒りは湧かなかった。

「非難する気持ちは起きなかったし、なったとしてもできませんでした。お金を借りている者の弱みですね。情けないですけど、私はその程度の人間なんです。そういうことなのか…とようやく理解できたんですが、弟は言葉でどうしたいとか、こうしないとお金は貸さないとか、脅しみたいなことは何ひとつ言いませんでした。でも、やっぱり応じなければいけないんだろうな、と思ってしまいましたし、正直に言えば、私自身も何かこう、自分でも説明がつかない心理に陥っていました。また来たい、というような…」

動揺を隠せないまま、バタバタと弟のマンションを後にした雪乃は、帰りの地下鉄の中で、明日残りのお金を借りに行くべきかどうか迷った。しかし、本当は自分に対して迷うふりをしていただけで、胸の奥底では、明日も必ず行くと決めていたのだという。

「お金への渇望と、それが火をつけたもっとドロドロとした衝動に駆られて、体が熱くなりました。そんな自分を正当化するために、これは家のために必要なこと、繰り返し自分に言い聞かせたんです」

☆翌日、金策のために弟の家を訪れた雪乃さんを待っていたのは、ある意味、「想像通りの出来事」だったという。彼女を苛んでいるその出来事については次回で詳細にレポートする。ぜひ人間関係の反面教師として読み進めて欲しい☆

ライター 中小林亜紀



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