「『ショウちゃん』の他にもう一人、叔父は、貧困家庭の患者の子で、『ケンジ』という男の子を引き取って養子にしました。その養子縁組みの条件は、『ショウちゃん』の面倒を一生みることだったようです」
院長の死後、病院長となった孝三は、みるみる事業を拡大していったという。同病院に隣接した老人ホームや、貧乏医学生向けの寮を建設し、地元の名士となったが、孝三は「土地のものは、土地に返す」と言い、病院を世襲させるつもりは無かったそうだ。
しかし、それを不満に思った孝三の妻は、孝三に隠れて、病院やその他の財産の名義を全て「ケンジ」の名義に変更しようとしていた。運よく、謀は食い止められたが、当時、同病院で働いていた、孝三の兄、和仁の次女「良子」が、妻の側につき、謀に加担していたことも明らかになった。
結果的に、「ケンジ」と妻は離縁されて赤の他人となり、孝三の元を去った。妻側に加担した姪の「良子」も、病院を辞めて音信不通となったという。
「それからは叔父に、『杉元』がつきまとうようになって……」
妙子は、そう続けた。
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