【前編あらすじ】
登記上で山林所有者として登録されていた「高木孝三」。既に死亡していたがその家には孝三の姪にあたる「高木妙子」が住んでいた。そんな彼女が語る「高木家」のある話。「おばあちゃん」が家の中にたくさんいたというだけで既に異常だが、祖父の長男「和仁」、次男の「利次」、末っ子の「孝三」の中でも、妙子の叔父「孝三」の周囲があまりにも奇妙であった……
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「孝三叔父さんは、とても優秀な人でしたが、家族に恵まれなかったんです」
聞くところによれば、医師だった叔父の「高木孝三」は、務めていた病院長の娘と見合い結婚をしたのだが、実は、結婚相手の娘は、病院長が使用人部屋に隠していた愛人が産んだ娘だった。その愛人は、サリドマイド推奇症で両手がなく、サーカスの見世物小屋で働いていた。巡業中に体を壊し、患者として入院していた時に、病院長が手を付けた。
他に子供がいなかった病院長は、その娘を自分の養子にして、優秀な医師だった孝三に宛がったのだった。孝三は結婚後何年間も、娘の実母の存在を知らされなかったという。
「叔父さん夫妻にも子供が授からなくて、養子を迎えたんです……」
その養子というのは、ある女性患者が、行きずりの男との子を身ごもり、何軒もの病院から堕胎を断られた挙句に、産み落とした赤ん坊だった。子供を望んでいた孝三夫妻は、その男の子を引き取り、養子にした。
「その子は『ショウちゃん』と呼ばれていました。『ショウちゃん』は、幼い頃から女装が趣味で、周囲から変わり者扱いされていました。18歳の時に東京に出てからは、ヤクザのような連中とつるむようになり、連絡が途絶えました。叔父は心配して、行方不明者の届け出もして、警察にもずっと、探して欲しいと頼んでいたのですが、結局…見つかりませんでした」
更に、妙子はこう続けた。