「何度かは自分が楽しく踊りつつ、パートナーの女性を数回リフト(女性を空中に持ち上げること)しただけで大金を得られてしまうので、一人前になったような気分を味わうのですが、気が付いたら、自分を求めてくれる女性ダンサーはいないし、自分には何の経歴も資格もないなんていう困ったことになります。私は、そんな男性ダンサーを何人も見て来ました。また、男性ダンサーの踊りやリフトは身体に負担がかかるものが多く、ケガをすることが多いという問題もあります。怪我をして踊れなくなったら、その間『収入はゼロ』ですよ! 何にも所属せずに、フリーのダンサーとしてやっていくということについて私は、基本的には勧めていません」
唯奈さんの必死の説得もあってB君は、発表会に呼ばれるのを待つだけではなく、先輩ダンサーの経営する教室で講師としても働きはじめたそうだ。
「進路、ということになると長い人生のことを考えないといけないので、今さえよければいいというような指導はできません。バレエを愛する気持ちは大切にしてほしいのですが、バレエで生きていくということがどんなに厳しいことかも、しっかり伝えていきます」
そう語る唯奈さんの顔は、決意に満ちていた。
Text:FORZA STYLE
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