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CAR 交通事故鑑定人は見た!

【続編】加害車両は制限速度を30km/hもオーバーしていた!そして、走行車線も……

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信号のある交差点で横断歩道を歩行中の歩行者が車両に轢かれた(歩行者は亡くなった)。車両の破損形状、路上の痕跡、加害者説明の不整合などから、交通事故鑑定人である中島博史氏がどのようにして事故は起きたのかを分析する。

前編:あなたならどうする?交通事故メカニズムを読み解く事例「歩行者と乗用車の衝突事故」の場合

被害者が飛ばされた距離や、最終停車場所などの情報をもとに、中島氏が行ったシミュレーションによると、加害車両の走行速度は63.69~68.03km/h。被害者と衝突した時点では53.85~57.52km/hだったという。制限速度 40km/hの道路を、加害車両はなんと、70km/h近くで走っていたのだ。加害ドライバーが「衝突に気づき一旦停車した」と証言している、衝突地点から約22m前方で、ようやく制動することができたのだと推察される。

また加害車両は、被害者を発見するまで自車線を走行してきたと説明しているが、そこから衝突地点であるセンターライン付近まで移動をすることは、車両の仕様ならびにタイヤの性能限界から不可能。加害車はある程度の区間、センターラインを跨ぐように道路中央を走行してきたことは間違いない。

歩行者が赤信号で横断しようとしたのであれば、左右からくるクルマに十分に注意を払い、タイミングを見計らって横断するはず。だが、非常識な速度で走行する車両については目測を誤る可能性が高い、というのが、中島氏の鑑定による事故の一連の流れだ。

中島氏はこう言う。「通常の運行状態(前照灯を点灯し、進行方向に応分の注意を払っている)であれば、運転者は歩行者を見落とすことは考えられません。加害車両側と被害者側、それぞれの信号の表示がどうであったかについては、確実なことは言えませんが、加害車両が制限速度を遵守していれば、衝突までに相当な減速ができたはずであり、ここまでの重大な事故には至らなかった可能性は高いです。少なくとも、加害ドライバーは遵法精神に富んだ運転者とはいえません」。

被害者となってしまった方は、いつも夜間のウォーキングを楽しんでいたという。一瞬にして奪われてしまった命は戻ってくることはない。ひき逃げをしないだけましだったが、交通事故鑑定人の前では、一切の嘘は通用しないということは、我々も肝に銘じておかねばならない。

Storyteller:Hiroshi Nakajima
Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:Raptor,gettyimages
Edit:Takashi Ogiyama



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