交通事故鑑定人である中島博史氏が解明した交通事故事例を紹介する本シリーズ。今回は、「丁字路を直進する車と、左折合流する車が接触した事故」における鑑定をご紹介する。
基本的には、優先されるのは本線道路を走る車両であり、合流を仕掛けた側の方が立場は弱いのだが、合流を仕掛けた側の保険会社からは、「双方が安全確認を怠っていた」という見解が提出されたという。しかも、合流を仕掛けた側の車両はすでに修理済みで、残る証拠は写真数枚、保管されていたのは本線道路を走る側の車両のみ。この状況で、責任の割合を争う裁判になった。
■監視カメラやドラレコ映像が存在せず、証拠も少なくて判断が困難だった
交通事故が起きたのは、某年8月の午前10時ごろ。南北方向の道路(本線)に、西側から道路が接続する丁字路において、本線上を北向きに直進していた車と、東向きに進行してきて丁字路で左折、北直線道路の北向きに合流しようとした車が衝突した。
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本線上の車は、左前タイヤとホイール、および左側面のフェンダー部(輪軸よりも後方)から助手席ドアにかけて擦った痕が確認できた。一方の左折してきた車の破損は、右前角付近に限定されており、前面側はバンパーカバー下部のフォグランプ位置まで、右側面側はバンパーカバーとフェンダーの境目(バンパーカバー側のみ)の破損があった。
事故を撮影した監視カメラやドライブレコーダーがあれば、大きな手掛かりとなるのだが、本件ではそうした証拠は存在しなかった。また、証拠品も少なく判断が困難ということもあり、責任の割合を争うため、交通事故鑑定人の中島へと鑑定が依頼された。