桃子の住むマンションは予想どおり上品でおしゃれな空間だった。リビングのソファーに案内され、少し雑談をしたあと、杏里は相談を切り出した。
「桃子先生……。あの……。お恥ずかしいんですけど、実は貯金がもうなくなってしまって。アルバイトしようと思ってるんですけど、いますぐ手持ちがないので、残念だけど来月ジュエリーは買えそうにありません。ごめんなさい…。でもお金が貯まったら買わせてください……」
杏里は冷静に話していたつもりだったが、もうセミナーに参加したりヒーリングを受けたりできないと思うと悲しくなり、自然と涙が出てきた。
桃子は静かに杏里を見つめて、大丈夫よ……と優しく声をかけた。
そして涙が止まらなくなってしまった杏里の横に座り直し、桃子がそっと話はじめる。
「杏里ちゃん……。私から提案があるんだけどちょっと聞いてくれる?」
桃子に優しく寄り添われて、杏里は泣きながら、はい……と返答する。
「あのね、杏里ちゃん。杏里ちゃんが良ければ私のパートナーにならない? 仕事ということではなくて。完全にプライベートで」
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