男女の恋愛事情に詳しい、ライター沢木文の最新レポートは、ある平凡な主婦に起きた「性愛事情」にまつわるものだ。
森野美緒(40歳)は、息子が10歳になった2022年6月に社会復帰。目下、夫に隠れてする「ある行為」に夢中だと言う。
「12年間、専業主婦をしていたんです。夫は子供が幼稚園に入った頃から“働け”と言っていたんですけれど、私は仕事が好きじゃないんです」
新進気鋭のIT関連会社の広報部に所属していたが、結婚を機に専業主婦になったという。
「私の世代は“職場の華”であればそれでよかったんです。でも、私の下の世代から自己肯定感が高いキラキラ女子の後輩が出てきて。彼女たちから冷たい視線を浴びるのつらくて、逃げるように結婚したんです。」
夫の勝悟(45歳)は大手商社に勤務し、海外留学経験もあるエリートだ。出会いは合コンだった。「年収は高いし、横浜にマンションを持ってるし、親戚は金持ちばかりだし。この人が私の王子様だ、と思って猛プッシュしました。おブスで汗臭いんですが、貧乏なイケメンよりは100倍いいって。」
すぐに子どもを授かり、毎日家にいられるという理想の生活がスタートした。義父母はそれぞれ会社を経営しており、多忙で干渉してこない。生まれた息子は聡明で、2歳から小学校受験塾に通い、名門私立小学校に合格。順調に行けば、付属の大学まで受験なしで進める。
「夫も仕事が忙しく、あちこち飛び回っている。私は特に趣味もないので、家で韓流ドラマとマンガを読んでいるだけ。朝、皆を送り出してから、テレビの前から1歩も動いていないことなんてざらでした。」
家にばかりいると、筋力は落ち、気力もなくなっていく。
「あらゆることがめんどくさくなるんです。当然、夫との間に夫婦関係はありません。彼も淡泊なので。」
美緒はアンニュイな美貌の持ち主だった。食べることに興味がなく、食事も摂らないことが多い。ほっそりとしていて、青白くはかなげな色気がある。
肝心の就職先はすぐに決まった。知人の会社でアルバイト採用されたのだ。夫は「よくやった」と大喜び。久しぶりに夫の笑顔を見た美緒は思わず歩み寄ったが、冷たく拒否されたという。
「主人と体を重ねたいのではなく、明日から社会に出る不安から、人肌が恋しかったんです」
男女関係のトラブルに詳しい危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、恵まれた環境にある主婦の社会復帰についてこう述べる。
「あまりにうまく物事が進みすぎているがゆえに、無気力に陥る既婚女性は多いんです。なかには、溜まっていた物足りなさが社会復帰を機に爆発して大胆な行動に走る女性もいます。」
人肌を求める自分に気付いた美緒。彼女は翌朝、予想外の場所で人肌にありつくことに成功したのだった。
美緒の人肌への欲望を満たしたのは、満員電車だった。
特に美緒が使う路線は、乗客の密着度が高い。満員電車での通勤が慣れていない美緒にとって、通勤の時間には、かなりの大変さが伴った。
ただ、感じるのは苦痛ばかりではなかった。
「若いイケメンの男の子が乗ってきて、圧迫されたときに気持ち良くて。男の子には心の中で『こんなオバサンが目の前にいてごめんね』と思っていたんです。でも、体を密着させていると、明かに男の子が反応していることがわかりました。『なにこれ、最高』って思っちゃいましたね。」
後編では、禁断な快感に悶える悦びを知ってしまった美緒の、さらにエスカレートする行為の詳細をレポートする。
Text:沢木文