「最初に感じたのは母性でした。10個下の彼と出会って『この子カワイイ!』ってドキドキして。熱心に面倒を見てあげようって、本当にそれだけだったんです。でもその子と同じ時間を過ごしているうちに、止められなくなってしまって……。やっぱり今の旦那に物足りなさを感じていたのがいけなかったんですかね」
※この記事は取材を元に構成しておりますが、個人のプライバシーに配慮し、一部内容を変更しております。あらかじめご了承ください。
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須藤ケイコ(仮名)42歳。幸せな結婚生活に憧れていたのは遥か昔の話である。20代前半に結婚した男性とは長く続かず、7年前ごく平凡で穏やかな男性と再婚をした。彼との間には子どもが1人いる。
旦那とはレスが続いていた。ケイコ自身も働いていたし、子どもは1人で十分だと思っていた。何よりも、もう旦那とはそういう事をする気にはなれなかった。
ケイコは昔から美人と名高かった。42歳になった今でもその美貌は健在だ。出産を経験したとは思えない程、スタイルもよく肌ツヤがあり、女性として申し分ない魅力を放っていた。
10年勤務している中堅文具製造会社との関係は良好で、ケイコはこの職場が大好きだった。子供が生まれてからも仕事はやめず、今も契約社員として融通を利かせてもらいながら働いている。
そんな彼女の業務は、主に営業マンのサポートである。
持ち前の明るさと人当たりの良さを発揮し、電話に出れば得意先からの評判は良く、わざわざ彼女を訪ねて事務所に挨拶をしにくるような取引先もあった。内勤者全員が馴染みの女性たち、営業マンも全員40歳以上のベテランばかりで、とても居心地のいい仕事場だった。
ケイコはこれまでの10年間、職場で仕事以外の事を考えたことはなかった。中途採用で正社員として入ってきたシュンに出会うまでは。
シュンは入社当時32歳だった。彼は出版業界から転職してきたのだった。
他の営業マンに連れられてデスクに挨拶をしに来た時、シュンの若さと笑顔にケイコは一目で夢中になった。
「最初の感想は『かわいい!』でしたね。挨拶に来た時とてもドキドキしたのを覚えています。」
この時、普段の職場には生まれない緊張とともに、家庭や職場で知らないうちに歳を重ねていた事を感じたという。
他業界から来たこともあり、シュンの発想は非常に新鮮で、会社に新しい風を吹かせてくれた。しかし新しいことを提案することで、古くからの方法に慣れ親しんだベテラン営業マンと衝突することもしばしばあった。
ケイコは持ち前の面倒見の良さを発揮し、シュンの個人的な仕事のサポートだけでなく、シュンと他営業マンとの橋渡し役など、あらゆる面で彼をサポートするようになった。仕事を通して、ケイコとシュンの関係が深まったのは間違いない。
そんな中、事件は起きた。出展したイベントの帰りで、感染症蔓延防止の観点から打ち上げは行われず、社員はそれぞれ家族の待つ家へと帰っていった。ケイコも自宅へ帰ろうとしたところ、シュンに食事に誘われたのである。
信頼のおける仕事仲間だったとはいえ、少なくともこの2人においては、同時に愛情と下心があったのは間違いない。
仕事の話を終えると、自然と男女の会話になった。仕事の話はどうしてもケイコがアドバイスする立場になってしまうため、こんな風にシュンと同じ目線で会話ができることをケイコは嬉しく感じた。
その夜、流されるようにケイコはシュンのアパートへと向かい、そのまま関係を持ったのだと言う。日増しにオフィスでも親密さを加熱させていく2人。しかし、唐突に始まってしまった職場不倫には、公開処刑を思わせるような結末が待っていたのだ。
男女関係のトラブルに詳しい危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は言う。
「職場不倫はバレないケースの方が珍しい。閉鎖空間に情を通じた男女がいれば、周囲は明らかに察知しますし、何より本人たちが親密さをお互いにアピールするため、自分たちの首を絞めてしまうんです」
もちろん、ケイコのケースも例に漏れなかった。
まるで公開処刑。2人を待ち受けていた衝撃の結末は、次号で詳しくレポートする。
Text:女たちの事件簿チーム