やがて陽菜さんは、
「何とかしてあの人好みのダンサーになりたい。」
と言うようになる。
「太ってる」「僕の好みの踊り方じゃない」。侮辱するような言葉を浴びせられていたはずなのに。陽子さんは、なんだか危険なものを感じたそうだ。
©Getty Images
陽菜さんは芸術監督のレッスンを増やしたいと言いはじめ、自宅から電車で3時間かけて通わなければならない芸術監督の自宅兼レッスン場にも行くようになった。
「それからはもう、めちゃくちゃです。娘はまだ未成年なのに、終電がなくなる時間までレッスンを続けておいて、帰りは自分でどうにか帰りなさいと言ったり、逆にどこかが気に入った日は、うちまで自分の車に乗せて送ってきたりしました。」
芸術監督と頻繁に連絡を取るようになった陽菜さんは、四六時中評価され、否定され、日に日に体調を崩していった。「スタイルが悪い」という言葉を気にして、もともと食が細かったのにますます食べなくなった。睡眠時間を削って芸術監督が好きだと言った映画を見て、音楽を聴く。
陽菜さんの日常は、芸術監督の色に染まっていった。まるで洗脳だ。
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