「家族との生活はとても充実していましたよ。休みの日には遊びに行ったり、授業参観や運動会も楽しかったですね。私はどこにでもよくいるサラリーマンですが、一人前にマイホームや新車を購入したり、本当に絵に描いたような明るい生活を送っていました」
トモカズはテレビや週刊誌で報道される浮気や不倫とは無縁のところにいた。
そのような報道は彼には遠い世界の出来事のように思えていた。
「休日に家でゴロゴロしているだらしない男にはなりたくないと思っていましたし、家族の前ではカッコイイお父さんでいたいと思っていましたね。料理も家事も頑張りましたし、休日にはキャンプや釣り、遊園地などに子どもをつれていきました。自分で言うのも変ですが“良いお父さん“だったと思います」
最初の頃はお父さんを演じることに心地良さもあったが、子どもが大きくなり、友達など自分のコミュニティを作るようになると、自然と休日に外出することも減っていったという。
「良いのか悪いのか、そのタイミングで言い渡されたんです。関西への単身赴任を」
最初のうちは家族と距離を置くことに寂しさを感じていたトモカズだったが、それとは反対に、突然手にした自由を実感するまでに時間はかからなかった。
「1人暮らしの自由を実感するとともに、結婚から今までの事を振り返って、全てを揃えてしまった感覚に陥ってしまったんです」
20代前半で結婚し、家や車など妻と子どもが不自由なく暮らせる環境は整った華の30代、小さいながら全てを手に入れてしまったような強烈な“物足りなさ”が彼を襲った。
「今思えばそれがいけなかったんでしょうね。不倫が始まるのは時間の問題だったのかもしれません」
順風満帆だった彼の商社マン人生は、職場の駐輪場でよく挨拶する20代の塾講師「ミユ」との出会いによって、破滅へと導かれていく。
衝撃の後編に続く。
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