■ハリアーのPHEVは、最上級「Z」の1グレードのみ
ハリアーのプラグインハイブリッド(以下PHEV)は、ハリアーの最上級グレード「Z」として追加される予定だ。搭載ユニットは、兄弟車のRAV4 PHVに搭載されている2.5Lエンジン+2モーターPHEVと同じだ。システムトータルの最高出力は306ps、0-100km/h加速は6秒、バッテリー容量は18.1kWhのリチウムイオンバッテリーで、EVモード最大航続距離は75km。RAV4 PHVに試乗した際、「ドン」と背中が押されるような、強烈な加速力を味わったが、ハリアーPHEVも同様の快速SUVとなるようだ。
このPHEVの「Z」グレードには、エクステリアやインテリアにも加飾が加えられる。エクステリアでは、専用ブラックメタリックメッシュグリル、ブラック塗装バンパー、専用の19インチホイールを装着するほか、ボディカラーにはPHEV専用色のグレーメタリックを設定。インテリアでは、ブラック&レッド調シートや後席シートヒーター、リモート空調システム、床下透過パノラミックビューモニター、12.3インチディスプレイオーディオPLUS、さらにはJBL製9スピーカーなども搭載となる。TFTメーターディスプレイには、12.3インチ(旧来は7.0インチ)の大型サイズが採用となる。
「Z」グレードの車両価格は620万円と、これまでのハリアーハイブリッドの最上級モデル「Zレザーパッケージ E-Four」の504万円を抜き、ダントツの高額グレード。納車は来春以降だというが、今からオーダーしても、納期は2年にはなるだろう(そもそもハリアー自体がオーダーストップ中)。
■640万円はちょっと欲張りすぎでは?
ここで、国内外のメーカーのプラグインハイブリッド車をいくつか挙げてみよう。ハリアーと同じミドルクラスSUVでは、身内のトヨタRAV4 PHVが税込469~539万円(9/8時点)、三菱アウトランダーPHEV「P-7人乗り」は税込462~532万円、マツダCX-60 PHEVは税込539~626万円、この辺りがガチンコのライバルとなる。また、同門のレクサスNX 450h+が税込714万円。
価格帯はやや上がるが、輸入モデルのミドルクラスSUVだと、ボルボXC60 Rechargeが税込844万円。全幅1900mm前後とラージクラスに近いモデルになると、メルセデスGLC 350 e 4MATICが931万円、GLC 350 e 4MATIC Coupéが税込963万円、BMW X3 xDrive30e M Sportが税込870万円、BMW X5 xDrive45e M Sportが税込1119万円と、価格はぐっと高くなる。
前述したように、ハリアーのPHEV「Z」グレードの価格は税込620万円。RAV4PHV上級グレードよりも80万円も高く、CX-60の上級グレードとほぼ同じだ。ハリアーには、300万円台前半のグレード(2.0Lガソリン2WD)もあり、あくまでトヨタブランドのミドルクラスSUVと認識されている方が多い。ハイブリッド2WDであっても370万円程だ。そんなイメージのハリアーに、たとえ中身が超最先端であっても、600万円を超える高額グレードは釣り合っているのだろうか。それならば、あと100万円を出してレクサスNXを狙った方が、所有欲も満たされ、リセールも明らかに上回る。
ハリアーPHEVのプライシングは、RAV4PHVと同じく、540万円が妥当だと考える。半導体をはじめとした部品不足による生産台数調整の影響で、PHEVのなかにもいくつかグレードを用意したかったのにできなかったのかもしれないが、適切な価格設定が得意なトヨタにしては、ちょっと欲張りすぎているように思える。
■人気モデルに違いないが、それはあくまで「その価格帯」だから
現時点、都会派クロスオーバーSUVとしては、人気実力ともにトップといえる、ハリアー。クーペにもみえる美しいボディスタイルをもち、全長4.74mかつ全幅1.85mのちょうどよいサイズ感と、質感が高く整えられたインテリアデザイン、快適な乗り心地と高い静粛性、動力性能と燃費のバランスなど、非の打ちどころが見当たらない。
しかも、ガソリンモデルの価格は299万円〜443万円、ハイブリッドは358万円〜504万円と、ちょっと頑張れば手が届く範囲であるプライシングもよい。2022年9月の年次改良で全グレードが約10万~13万円の範囲で価格アップとなる見込みだが、それでも他メーカーと比べれば割安だといえる。
しかし、ハリアーが光ってみえるのは、同価格帯のライバルたちと比べているから。ラグジュアリーブランドまで攻め込むようなハリアーPHEVの価格は、あまり賢くないように思う。そう考えると、三菱とマツダのPHEVは、まだ、「焦る」必要はないかもしれない。
Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:TOYOTA, LEXUS
Edit:Takashi Ogiyama