「乃亜ちゃん、何してるの!? ちょっと今何隠したの? 出して!!」
「何も持ってないよ、何もしてない。何も……」
そう言いながらも乃亜のポケットからは、ダイヤモンドのリングが出てきた。加奈はじっと乃亜を見つめながら言った。
「直斗でしょ。お金使ってるのは知っていたけど……。だめだよね、こういうの。直斗のところに連れて行っちゃったのは私だし、責任も感じてる。でもこれって犯罪だから。私、乃亜ちゃんのこと犯罪者にしたくないよ」
加奈は泣きながらこのことを秘密にすると誓った。
それからしばらくして、加奈が友人の洋祐を連れてきた。乃亜が気にいるとは思わなかったが、気晴らしの遊び相手にはなると考えたらしい。
地味な洋祐との付き合いは普通そのものだった。映画や食事のデートも刺激がなく平穏そのもの。だが、乃亜はその普通さを大事にしたいと考えるようになっていた。とはいえ、当分借金返済が終わることはない。長い返済の道のりは始まったばかりだ。
そんな過去の後ろめたさから当分結婚できるなどとも考えていないところへの、洋祐からのプロポーズだった。
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