■質量とコストをかけてまで、音振を改善することはない
現行型シエンタの、もう一つの弱点が静粛性の低さだ。とくにハイブリッド車は一般道を流している分には非常に静かなのだが、加速のためにアクセルペダルを踏み込むと、急にエンジンが存在感を表し、静動の差がありすぎて、ひと際うるさい。フリードは静粛性が高く、エンジン音も気にならない音質であるため、比較されがちなのだが、おそらくシエンタは、新型でも静粛性は期待できないだろう。
次期型シエンタには、TNGAの考え方に基づくGA-Bと呼ばれる小型プラットフォーム(バイポーラバッテリー含む)が採用となる予定だ。だが、そのGA-Bを採用した新型アクアでも、静粛性の低さは解消されていなかった。ボディが小型となるシエンタの場合、エンジンノイズだけでなく、ロードノイズまでもが車内に響き渡りやすい。
コストと質量を投資して、制振材や吸音材を入れ込めば、静かにすることはできるだろうが、シエンタは、「燃費最優先の低価格コンパクトカー」だけに、やることはないはず。次期型シエンタ(ハイブリッド車)も静粛性に関しては、フリードに敵わない可能性があるのだ。
■まとめ
音振性能や走りといった動的な質感を、シエンタがどれほど磨いてくるのかも注目ポイント。「5ナンバーサイズ、両側スライドドア、いざとなれば3列シート」という構成を外さなければ、シエンタは次期型でもある程度はヒットするだろう。
だが、次期型の登場を控えているのはフリードも同じ。ホンダの国内販売を支えている、貴重なフリードは、ホンダも本気で仕上げてくるはず。フルモデルチェンジは、少なくとも6年間はそのまま戦わないとならない。次期型シエンタが、戦えるだけの内容となって登場するのか。今夏とされている登場が、非常に楽しみだ。
Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:TOYOTA
Edit:Takashi Ogiyama