■クルマの性能向上によって、メーカーが自主規制
交通事故を減らすため、当時の国土交通省や自動車メーカーは、100km/h~200km/hを黄帯で塗り、200km/h以上は赤帯を付けた速度メーターや、105km/hを越えると「キンコン」と鳴る速度超過警告ブザー(速度警告音)などを開発します(※1974年に義務付けされたブザー音でしたが、音によって集中力を欠くなどの理由で1986年には廃止)。
しかしその後もクルマの性能は向上しつづけたため、より強力な対策として、国内の各メーカーが考えたのが、速度メーターの表示上限を180km/hにして、交通事故の抑止力とすることでした。
上限速度で燃料カットをする速度リミッターも導入、それ以上はスピードが出ないような仕組みを取り入れました。今では、表示上限180kn/hはもちろん、速度リミッターも、市販されているすべての国産車で、例外なく採用されています。
しかしながら、これらはあくまでメーカー側の自主規制。アフターパーツメーカーからは、各種リミッター変更装置(実質的なリミッターカット)や、300km/h表示のフルスケールメーターなどは販売されていました。
長く180km/h上限が続いた後、国産の自動車メーカーが純正で表示上限180km/hを突破したのは、2007年に登場したR35型GT-Rでした。GT-Rのスピードメーター上限表示は340km/h。ただし、180km/hでの燃料カットによる速度リミッターは残っており、公道では本領発揮することはできません。速度リミッターを解除できるのは、国内の主要サーキットのパドックに入ったときのみ。しかもナビの位置情報で判断するので、公道では絶対に解除できません(国土交通省の認可も得ているシステム)。しかしこれでいよいよ、スピードメーターの上限表示が「開放」となったのです。
■通常使用においては、上限180km/hのほうが見やすい
GT-Rに続き、最近は表示上限180km/hを突破したクルマが増えてきました。例えば、LEXUS IS F(2008年)で上限は300km/hに、LS(2009年)も上限280km/hで登場。現在は、レクサス車全般、トヨタ86、BRZは260km/h、GRヤリスは280km/h、マツダロードスターが200km/h、スイフトが200km/h、スイフトスポーツが260km/hとなっています。
スピードメーターの表示上限が高いこと(=最高速度が高いこと)は、ハイパフォーマンスカーであるという証でもあり、ファンにとってはたまらないものですが、実は上限表示180km/hの方がいいこともあります。針で示すタイプのスピードメーターだと、表示上限が180km/hの場合、ちょうど真上に100km/hがやってくるため、高速道路を走行中に、さっと確認がしやすくなります。しかし、表示上限が300km/hだと、メーターの左の方向に100km/hがあるので視認がしにくいのです。デジタル表示では関係ありませんが。
■まとめ
クルマの高性能化によって増えていった悲惨な交通事故。自分たちが開発したクルマでの悲惨な事故をすこしでも減らせるよう、自動車メーカーはいつの時代も「より安全に」を考えて開発をしています。ユーザーとしても正しい使い方を心がけ、安全で楽しいカーライフを過ごせるようにしたいものです。
Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:SUZUKI、NISSAN、TOYOTA、Adobe Stock