華やいだバブル期の女性たちが結婚相手に求めた「3高(高学歴、高身長、高収入)」。
その当時はクリスマス前になると男性が彼女のために高級ホテルを予約し、高額なプレゼントを用意した。それがあたかもデフォルトであるかのような風潮があった時代だ。きっと今の若い人たちには理解不能だろう。
時代の空気がすっかり変わった現代では、女性の社会進出が進むと同時に、女性の結婚観やライフスタイルも大きく変わった。今、彼女たちが結婚相手に求めるのは「3優」だという。
「家族に優しい(家事・育児に協力的)」「私だけに優しい(浮気をしない)」「家計に優しい(浪費をしない)」、とにかく「優しい」男子なのだ。
けれどいまだに「3高」という古い価値観から離れられない人たちもいる。
※この記事は取材を元に構成しておりますが、個人のプライバシーに配慮し、一部内容を変更しております。あらかじめご了承ください。
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「3高」という古い価値観から離れられない……、涼子(仮名)の母がまさにそうだった。25歳を過ぎた娘に自分の理想とする相手を募っては、勝手に見合いをセッティング。娘が仕事に邁進すればするほど結婚から遠のいていく……。そんな危機感を必死に振り払おうとするが故の母の行動だった。
あまりに強引に話を進められ、頭にきた涼子は、
「これ以上見合いを強要するなら家を出る」
そう告げたこともあったが、狂ったように怒りだした母に辟易し、しぶしぶと従うように。
結婚願望が全くない訳ではなかった。しかし自分が他人と暮らすイメージが出来ず、面倒なことのように思えてならなかった。そんな気持ちを抱えながら向かったお見合いに現れた人達は……。

延々と自慢話をする人。高学歴を鼻にかけ上から目線のわりに話がちっとも面白くない人。資産家であることをひけらかしつつ両親との同居を絶対条件にする人。自分のお気に入りの顔の角度で常にこちらを見る人。食べ方が汚い人。ワイシャツが腰から飛び出ているだらしない人。一円単位まで割り勘を求めて来る細かい人、などなど。
自分のことは棚に上げ相手の欠点ばかりに目が行き、涼子の結婚への気持ちは遠のくばかりで、毎回「早く帰りたい」と心で唱えていた。
そんなある日、今までの人とは明らかに毛色が違う人が現れた。

その人は夏場とはいえ「見合い」にしてはラフ過ぎる服装に素足にサンダルを履いていた。ワンピースを着ていた涼子を見て
「石丸孝(仮名)です。すみません。スーツを着てくれば良かったです」
と申し訳なさそうに謝った。涼子は驚いたものの問題ないと笑うと、彼はホッとしたように人懐っこい笑顔を見せた。
さらに……連れて行かれたのは古びた定食屋。「服装といい、この店といい、バカにされているのかしら」と涼子は戸惑った。「普通」はおしゃれなカフェやレストランだろう、と。
訝しげに思った涼子はまず、自分の自己紹介をすることにした。一般的にはそれなりに華やかな経歴だ。それで一手を打とうとしたわけだ。
しかしそれを孝は屈託のない笑顔で楽しそうに聞いている。いちいちリアクションがオーバーで面白い。だんだん肩肘を張る自分を馬鹿らしく思え、孝につられて涼子も素の顔を見せて笑っていた。
Text:女の事件簿調査チーム