@gavin_the_editorさんのinstagramでの投稿より
王道中の王道ROLEX。日本一、いや世界一知名度が高いロレックスですが、みなさんはロレックスのこと、ちゃんとご存知ですか?
なんとなくカッコイイから、資産価値が高いからと言って選ぶのはもったいない。なぜなら大人の男性にとっては身に着ける腕時計はご自身のステイタスとも直結します。
今回お話しするのは、ロレックスの「ヒゲゼンマイ」について。
さてさて、みなさんヒゲゼンマイとはどんなパーツか詳しくご存じでしょうか。
ヒゲゼンマイとは非常に小さなゼンマイで、その伸縮を通じてテンプの振動を調速します。リボンのような形状をしており、内側の先端はテンプの軸に、外端はテンプ受けに取り付けられています。
歩度の正確さを左右する重要な部品で、厚さがわずか0.001ミリ狂うだけで、ゼンマイの種類によっては、歩度が1日あたり約30分も変わってしまうのです。
ヒゲゼンマイが伸縮をすると、テンプは車輪のように左右に回転運動をはじめ、他の歯車やパーツに1秒間に1回針を進めさせる振動を与えます。
まさにヒゲゼンマイは機械式時計の心臓部とも言える部分ですね。
しかし、その厚さは100分の3mm程度と人間の髪の毛よりも細く(厚みが薄い)、そしてその重さは約2.5mgしかありません。その製造は、時計製造技術のなかでも最も難しいのです。
と、ここまでで簡単にヒゲゼンマイについて解説しましたが……実は「ヒゲゼンマイ」といっても全ての時計に同じものが使われているわけではなく、大きく分けると平面的に巻き上げたフラットタイプとブレゲが発明した立体構造の巻き上げタイプの2種類に分類できます。
使用される材質も様々で、多元合金、ペリンバー、モエリンバー、タンゲリンバー、マンゲリンバー、ベリリウム、シリコンなどがあります。
そしてテンプの振動数は主にヒゲゼンマイの長さと堅さによって変化します。ロービート(低振動)の物は18000回転、ハイビート(高振動)の物は36000回転の範囲で設定されています。
現在高級時計に使用されているのは巻上げ式のヒゲゼンマイが主流です。巻上げ式のヒゲゼンマイは、高級時計の価格に見合う精度を維持するために欠かせないパーツですが、製作には高い工作精度とコストがかかり大量生産には向かないといった側面があります。
また、従来の巻上げヒゲゼンマイでは精度の安定性は十分でしたが、素材の性質上、磁気の影響を受けやすいという点が最大のデメリットでした。
@bluemarlinjewelryさんのinstagramでの投稿より
上の写真は時計用語で「調速機」と呼ばれるテンプ一式。ブルーの部分がヒゲゼンマイです。
そのためロレックスは「ブルー パラクロム・ヒゲゼンマイ」を5年にも及ぶ研究期間を経て開発しました。2005年に発表されたGMT マスター(Ref.116718LN)が、「ブルー パラクロム・ヒゲゼンマイ」を始めて搭載したモデルです。
「ブルー パラクロム・ヒゲゼンマイ」はニオブ、ジルコニウム、ハフニウムといった素材で出来た合金でできており、耐磁性に優れている事はもちろん、温度変化にも強いのです。
また、衝撃を受けた際の影響が少なく従来のヒゲゼンマイと比較すると、約10倍の耐衝撃性があるとされます。現在ではエクスプローラー、サブマリーナー、デイトナ等多くのムーブメントに装備されています。
この「ブルー パラクロム・ヒゲゼンマイ」は2000年に入って登場した後技術的および工学的な革新の技術として現在でも非常に印象的です。以降、修正・改良が重ねられ、またより時計製造の観点から重要な進歩(クロナジー脱進機など)と組み合わされて進化を続けています。
お気にいりの腕時計を大切に愛用していても、不意に落としてしまうことや、スマートフォンや鞄のマグネットなどに近づけすぎてしまうことで磁気を帯びてしまうといった日常生活を送る上で発生しうる「リスク」はどうしても避けることはできませんね。
技術を革新することで、ユーザーがより安心して時計を愛用できるようにするとは「実用時計」を哲学にするロレックスらしい取組みですね。
(ロレックスが「ブルー パラクロム・ヒゲゼンマイ」より後に開発・発表した「シロキシ・ヒゲゼンマイ」の事はあえてこちらではとりあげておりません。また後日機会をみてそちらについても書かせていただくかもしれません)
Text:FORZA STYLE